オーケストラを通じて山形の魅力を発信し続ける!山形交響楽団

メンバーに山響の魅力を聞きました!

 独自の存在感を放ち続ける山形交響楽団。7月末にはミューザ川崎の「フェスタサマーミューザ」に登場し、鈴木秀美の指揮で鮮烈な響きと表現意欲にあふれた快演を聴かせた。その公演の合間、同公演でトップを務めた3人、フルート首席の知久翔、第2ヴァイオリン首席の堀越瑞生、チェロの渡邊研多郎に現在の指揮者陣と山形の魅力について伺った。知久と堀越は昨年入団で、フレッシュな山響を象徴するような存在。18年目の渡邊はこの日、急遽出演できなくなった首席奏者の代わりに首席代理を任されており、楽団内の信頼の厚さがよくわかる。

左から:堀越瑞生、渡邊研多郎、知久 翔 お揃いの山響Tシャツを着て

 山響は現在、常任指揮者に阪哲朗、首席客演指揮者に鈴木秀美、ミュージック・パートナーにラデク・バボラークという、屈指の指揮者陣による体制を構築している。前音楽監督(現在は桂冠指揮者)の飯森範親も含めて、名指揮者たちが山響にもたらしたものは大きい。

渡邊「入団したシーズンに飯森さんがモーツァルトの交響曲全集に取り組み始めて、そこから“これが山響”というものができあがりました。いまは3人の指揮者たちで、山響の音色のバリエーションが増していると思います。新入団員も増えてきて、これからどう変化していくのか楽しみです」

 現在の3人は各自の音楽の作り方が違い、そのバランスがうまくいっている。中でも常任指揮者の阪の存在感はやはり特別で、常にヴィヴィッドな音楽を求める阪の考えは楽員にも浸透している。

渡邊「オペラが得意な方なので、どんな曲でもストーリー性があって展開が早い。阪さんの指揮に乗れるようになると、こうやると面白い、お客さんにこの愉しさを聴いてもらいたい! と思うようになってくるんです」

阪 哲朗 (c)Kazuhiko Suzuki

堀越「阪さんと演奏すると“音楽は生き物”と強く感じられます。すごく楽しいし、ワクワクしながら演奏しています」

知久「最近はオケ以外の曲を演奏するときでも“阪さんならどう考えるかな”と考えるようになっていて、かなり影響されています(笑)。視点が増えましたね」

 名チェリストにして古楽の名匠でもある鈴木秀美は、ナチュラル・ブラス(金管)を自発的に使っている山響との相性も良い。

渡邊「学べることがとても多い。音がどこにどう向かうかというのは、やはり右手の技術が重要であることを強調されます。その奏法がうまく決まったときは本当に気持ちいいです」

堀越「弦楽器の技術的な引き出しが多く、弓の使い方や音のバランスなどとても勉強になります」

知久「管楽器には音色の変化で彩りを加えることを重要視されています」

 ホルンのスーパースターとして活躍したラデク・バボラークは、その豊富な経験と音色の多彩さが際立つ。

知久「要求は細かくて厳しいんですが、本人としてはシンプルに作りたい、自然にやりたいという。それが難しいわけですが、彼がホルンで音を出す瞬間は確かにすごく自然。彼の“自然”のレベルが高すぎるんですね(笑)」

堀越「バボラークさんは歌うようにホルンを吹くので、オケの音色が一気に変わります!」

 山形の魅力について聞くと、環境、自然、食事など、「地元愛」の話題は尽きない。

渡邊「出身は埼玉ですが、山形との往復を繰り返すうちに、山形の山が見えてきてホッとしたときがありました(笑)。それ以前は、出張して山が無いと不安という人には“?”だったんですが、そのときは自分も“帰ってきたなあ”となって、“ああ、これか…”と(笑)」

堀越「山形駅の目の前にホールがあるばかりか、県内全域にもいいホールがたくさんあり、山響の強みにもなっていると思います。あと、食べるものが美味しいです! 美味しすぎて太ってしまいやすいんですが(笑)」

 各地の学校やホールで県内のこどもたち全員が山響の音に触れられる「スクールコンサート」について「山響の使命。続けていきたい」と真剣に語る一方で、「山響を聴きに、ぜひ山形にお越しください! そして山響Tシャツも買ってください!(笑)」と、3人とも明るい。街なかに楽員の写真が掲示されているほど地元に密着した山形で、彼らの明るく澄んだ音色に触れてみたい。
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年10月号より)

第312回 定期演奏会
2023.10/21(土)19:00、10/22(日)15:00 山形テルサホール

出演/小林研一郎(指揮)、瀬﨑明日香(ヴァイオリン)
曲目/サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
   サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
   ドヴォルザーク:交響曲第8番 他
問:山響チケットサービス023-616-6607
https://www.yamakyo.or.jp