レコーディング第1号は近藤譲の『線の音楽』でした
独立系レーベルならではの“こだわり”で、様々なジャンルの演奏家たちと話題性溢れる数多のアルバムを世に送り出し、今年6月に創立40周年を迎えたコジマ録音。看板通り、作品の魅力を最大限に引き出す確かなレコーディング技術でも高い評価を受ける同社の原点は、小島幸雄社長の学生時代に遡る。
「高校の時から放送部に所属して、国立音大では、当時の名前で『音響技術室』という設備の保守や学内外の演奏を記録する部署に1年生の時から出入りしていました。そこでは、バイト代はタダ同然でしたが、録音作業のない時にスタッフの方たちにアンプ作りを教えてもらったりするなど、録音技術や機材の使い方について学びました。そして、卒業後に音大時代の同級生たちを中心にフォンテックを立ち上げたのです」
1974年にフォンテックから独立して現在のコジマ録音を設立。レーベル名を「ALM RECORDS」とし、レコードの制作を開始した。
「杉並区の下井草で、近藤譲の作品集『線の音楽』を制作したのがレコード第1号。その後すぐに高円寺に移るわけですが、最初の10年くらいは自主制作として現代音楽など自分の好きなものばっかり作っていたので、カルト・レーベル呼ばわりされていました。現代音楽に近いこともあってか、阿部薫のものとかフリージャズの録音でも業界では知られていましたし、武久源造の『鍵盤音楽の領域』シリーズを皮切りにバロックものも増やしていきました。それらの制作費を稼ぐために、コジマ録音からリリースしない“録音のみ”の仕事もかなり請けました。高円寺という場所柄、ロックやパンク系も…あの『裸のラリーズ』をマルチで録ったりね(笑)」
80年代になり、録音メディアがLPレコードからCDへと移行していった。
「当初はオープンリール・テープで録ってドルビー技術でノイズを取り除いていましたが、当時の現代音楽は静寂の時間を要求する作品が多かったので、高音質のCDはうってつけのメディアだったのです。ただ、90年代に倉庫に保存してあったレコードを1トンくらい捨てたのは今から思うともったいなかった! 事務所を代々木に移転してから家賃も高かったもので(笑)。もっとレーベルを充実させなければと思い、クラシックの主流であるロマン派の録音をどんどん増やしていったのが現在のラインナップに繋がっています」
14年程前から現在の阿佐ヶ谷の地に事務所を構えている。今年5月発売の40周年記念2枚組限定盤CD『ザ・ベスト・レコーディング 1974-2014』や20年ぶりに発行されたCDカタログ本(同社のウェブサイトからダウンロード可能)でその足跡を辿ると、ラインナップは実にバラエティ豊か。
「メジャー・レーベルと違って旧譜も長く売る方針。もっとも私自身は『録音は巧いけど売るのは下手』なんてよく揶揄されますが、優秀なスタッフのおかげで何とかやってこられた。結局、演奏家選びもそうですが人との繋がりですね」
見渡せばクラシックのインディーズは、小島社長と同世代のカリスマ経営者がずらり。
「どこも後進へのバトンタッチやハイレゾ配信など、次世代への対応が課題ですね。まあ初心を忘れず、生涯現役のつもりで頑張ります」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
コジマ録音
http://www.kojimarokuon.com
【CD】
『コジマ録音40周年記念CD ザ・ベスト・レコーディング 1974-2014』
ALCD-100,101(2枚組)
¥1500+税