平日の午後に名演奏を聴く贅沢
よみうり大手町ホールの『アフタヌーン・コンサート』は、平日午後2時から名だたる演奏家たちのリサイタルをたっぷり楽しめるという贅沢なシリーズだ。シリーズ第3回目に登場するのは、現在もっとも期待される若手ピアニストの一人、金子三勇士。金子の一音ごとに意味や方向性を感じさせるタッチ、目の前で音楽が産声をあげるような瑞々しい緩急、知性とユーモアに富んだ楽曲解釈は、幼い頃からハンガリーに渡りリスト音楽院で培った揺るぎない基礎力に支えられている。そんな金子が午後のコンサートに選んだ曲は、前半はショパンのスケルツォ第2番、前奏曲「雨だれ」、夜想曲「遺作」そしてベートーヴェンの「月光」と名曲揃い。後半はバッハのフランス組曲第6番に始まり、金子がもっとも得意とするリストの『巡礼の年』より「物思いに沈む人」「ダンテを読んで」、さらに「ラ・カンパネラ」といった超絶技巧を要する作品が並ぶ。平日の午後が格別な一時となるに違いない。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
11/12(水)14:00 よみうり大手町ホール
問:読売新聞文化事業部03-3216-8500
http://yomi.otemachi-hall.com