2人が語る“バレエ新時代”
来たる11月1日からパリ・オペラ座バレエ団芸術監督に就任するバンジャマン・ミルピエが設立した〈L.A.Dance Project〉の初来日が迫っている。前号では、ミルピエ監督のインタビューをお届けしたが、今回は最先端を走る「アーティスト集団」と太鼓判を押すカンパニー2人の精鋭をご紹介しよう。
ミルピエ作品の魅力
まず創立以来のメンバーであるジュリア・アイヒテン。監督と出会ったのは、彼女がジュリアード音楽院の学生時代のことだ。その第一印象についてこう語っている。
「なんともミステリアスで意表を突く人でした! 映画『ブラック・スワン』を振付けられた後だったので、私たちクラスメートの中では、当時制作中のオペラ『売られた花嫁』のダンスシーンにはバレエ・ダンサーが選ばれるとばかり思っていましたが、彼はコンテンポラリーのダンサーを選んだのです。とてもびっくりしました」
ミルピエ作品はこれまで数々踊ってきた。その魅力をどう感じているのだろう。
「一番刺激的なのは、たとえテクニック優先の動きでさえも“生きたダンス”として振付に生命力を与えていること。そのような踊りに身を任せられるのはいつも心地よく最高の幸せです。テクニックと感情表現のバランスをいかに保つかに踊りがいを感じます」
今回ミルピエ及びガット作品と並んで、フォーサイスの代表作『クインテット』が上演されるが、この鬼才とのリハーサルは実に熱気溢れたものだったらしい。
「フォーサイス・テクニックをみっちり叩き込まれ、本物のダンサーであり続けるためには、“トンガッて生きる”ようにと鼓舞されました」
フォーサイスにも感銘を与えたというL.A. Dance Projectのダンサーたち。さぞかしスリリングな舞台が観られることだろう。
サープからの影響
もうひとりのチャーリー・ホッジスは、人気振付家トワイラ・サープのミュージカルなどで活躍した実績の持ち主。バレエ出身だが、ブロードウェイで最も優れた男性ダンサーに贈られるフレッド・アステア賞も受賞している。ミルピエ監督とは、知人を通じて知り合い、ダンサーとして、またサープのアシスタントとしての技量を見込まれ、彼のプロジェクトに参加した。
サープとはここ10年ほど一緒に仕事をしてきただけに、自身のキャリアを築く上で多大な影響を受けたと告白。「サープの創作メソッドは独創的なもので、様々な側面を間近に学ぶことができ、非常に刺激的だった。そこで自分が成長できたのは本当によかったと思う」
ホッジスは、美術分野で名高いプラット大学の修士課程で工業デザインを学んだ経歴も持つ。
「ダンスとデザインには様々な共通点があるけれど、重要なのは、ダンサーとしての経験がデザインに活かされること。私のデザインが空間を意識し、より繊細で情熱的と言えるのはそのせいかもしれません」
エキサイティングなコラボレーションの成果が観られるのがますます楽しみになってきた。
取材・文:渡辺真弓
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
11/8(土)、11/9(日)各15:00 彩の国さいたま芸術劇場
問:彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939
http://www.saf.or.jp