クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ)&平崎真弓(ヴァイオリン) ―モーツァルトと遊ぶ

時代様式を知り尽くした二人が織りなす極上のモーツァルト

 この5月にトッパンホールで、クリスティアン・ベザイデンホウトと平崎真弓がモーツァルトのソナタ等を取り上げるリサイタルを行う。

 ベザイデンホウトは欧州屈指の名フォルテピアノ奏者。軽やかな繊細なタッチで鍵盤から香しい薫りを引き出すような演奏が魅力だ。目下フライブルク・バロック・オーケストラの芸術監督の一人を務めるなど、ますます欧州の音楽界になくてはならない存在になっている。一方の平崎はライプツィヒのJ.S.バッハ国際コンクール第2位等のコンクール受賞後欧州で活動していたところ、やはりドイツの名門古楽オーケストラ、コンチェルト・ケルンから是非ともうちのコンサートマスターにとスカウトされた。以来、機知と創造性に富むと同時に、生き生きした躍動感あふれる演奏で欧州の音楽ファンを魅了し続けている。互いに人柄も音楽も明るくてチャーミング。そんな二人のモーツァルトなのだから期待はふくらむ。

 モーツァルトが「青春の旅」の途上のマンハイムで作曲したハ長調 K.296、旅を経験した後の精神的な深みを感じさせるト長調 K.379(373a)、そしてウィーン時代のよりスケールの大きな変ロ長調 K.454の3つのソナタを軸にしたプログラム。これらのソナタの醍醐味は各楽器の軽やかで多彩な発音による語りや対話、歌にあるが、それには作曲家の時代様式のフォルテピアノやガット弦を張ったヴァイオリンほど適したものはない。これらの楽器も曲も知り尽くした二人のことだ。自由で軽やかな精神に満ちた極上のモーツァルトを聴かせてくれるに違いない。
文:那須田 務
(ぶらあぼ2023年5月号より)

2023.5/10(水)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com