厳かなオルガンの響きとともに野村萬斎が舞う祝いのとき
豊田市コンサートホールのオルガンは、北ドイツのバロック様式を基本として幅広い時代の音楽に対応できる名品。世界的に名高いジョン・ブランボー製であり、ホール完成から5年後の2003年に同社のものとしてはアジアで初めて設置され、会場のシンボルとしてその荘厳な響きで聴衆を魅了してきた。6月に開催されるのはその設置20周年を記念するコンサート。同ホールが誇るオルガニストの徳岡めぐみを中心にスペシャルなプログラムが予定されている。
注目は数百年の時を経て東西の歴史が交わる能楽とのコラボレーション。第2部の近藤岳作曲「オルガンのための『獅子』」では、巨大なパイプオルガンの響きと囃子方とが溶け合うアンサンブルのもとに、シテ方観世流の2人の能楽師(梅若紀彰と観世喜正)が舞う。続く第3部では当代のカリスマ狂言師・野村萬斎の独舞「MANSAIボレロ」が披露される。萬斎が長年の構想を経て2011年に東京の世田谷パブリックシアターで初演し、以降各所で好評を博している演目であり、ラヴェルの傑作舞踊音楽「ボレロ」に「三番叟」を軸とする狂言の発想と技法とを集結させたオリジナル。「三番叟」の舞が五穀豊穣を寿ぐといわれ、地固めの意味で足拍子を力強く踏むのが印象的である。こちらにはベルギー生まれのオルガン奏者ジャン=フィリップ・メルカールトも参加。いずれも祝賀に相応しいラインナップで観逃せない。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2023年3月号より)
2023.6/3(土)15:00 豊田市コンサートホール
問:豊田市コンサートホール・能楽堂事務室0565-35-8200
https://www.t-cn.gr.jp