鮫島明子ピアノリサイタル “還” 〜時は刻み、自然に還る〜

ベーゼンドルファーの響きで辿る鍵盤音楽の系譜

 鮫島明子は桐朋学園大学卒業後、渡仏し研鑽を積んだピアニスト。パリ・エコールノルマル音楽院を修了後はパリを中心にフランスで演奏活動を行い、帰国後も音楽祭への出演など国際的に活躍を続けている。テーマ性をもったリサイタルや、トークを織り交ぜた音楽の魅力をわかりやすく伝えるコンサートなど、幅広い演奏活動や後進の育成も行っており、音楽文化の発展に大きく貢献する存在である。繊細で、凛とした空気感を漂わせる美しい音色が魅力の彼女はこれまでにモーツァルトとショパンのディスクをリリース。いずれも楽曲の美しさはもちろん、作曲家が作品に込めた想いにまで対峙した解釈の深さによって高い評価を集めている。

 2020年9月に行われる予定だったリサイタルはコロナ禍により開催できず、約3年半振りとなる今回のリサイタルでは新たにプログラムが組まれた。バッハの「半音階的幻想曲とフーガ」で始まり、ベートーヴェンにメンデルスゾーン、バルトークにスクリャービンを経て、最後はショパンの即興曲第3番と「舟歌」で幕を閉じる。鍵盤音楽の歴史を音で辿りつつも、ただ順番に歴史を追うのではなく、すべての作曲家がバッハの影響を受けていたことを匂わせるように、最も強く影響を受けた一人であろうショパンで終結させるところに強い想いを感じる。奏者の意図に敏感に反応し、ニュアンスの変化が豊かなピアノであるベーゼンドルファーで奏でられる、多彩な作品の魅力をぜひ堪能してほしい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2023年3月号より)

2023.3/31(金)18:00 横浜みなとみらいホール(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
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