7月に「ダ・ポンテ三部作」完遂
2005年の開館以来、多彩な作品を取り上げてきた兵庫県立芸術文化センターの「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ」が、2023年にモーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》を上演する。7月の公演に先立ち2月15日、同センターにて記者会見が行われ、芸術監督・指揮者の佐渡裕、題名役のバリトン大西宇宙、ドンナ・アンナ役のソプラノ高野百合絵が登壇した。
佐渡裕芸術監督のタクトのもと、2020年の《メリー・ウィドウ》、昨年の《ラ・ボエーム》と近年は華やかな演目が並んだが、2023年はモーツァルトが戻ってくる。《コジ・ファン・トゥッテ》(2014)、《フィガロの結婚》(2017)に続く今回の《ドン・ジョヴァンニ》でダ・ポンテ三部作が同シリーズ完遂となる。
多くの女性を虜にしている稀代のプレイボーイが、最後には地獄へと落ちていく《ドン・ジョヴァンニ》。「悲劇と喜劇の二面性が混ざり合ったモーツァルトらしい作品」と佐渡が語るように、本作はダ・ポンテの台本と相まって非常にドラマティックに構築されている。
現在は一年の数ヶ月をウィーンで過ごしている佐渡。
「モーツァルトが最初にウィーンで暮らした家や、《フィガロの結婚》を書いた家、歩いた道など、モーツァルトゆかりの地が私の住む家の近くに点在しています。世界中の人々がいかにモーツァルトを愛しているのか、ということを感じますね。開館から18年、毎年夏のこのプロデュースオペラを続けてきて“夏のオペラ祭”のように愛されてきました。誇れる舞台にしていきたい」
大西はドン・ジョヴァンニを演じるにあたり、「バリトンの中でも究極的な役。演技、声はもちろんのこと、カリスマ性を求められる。自分にとってチャレンジングな役で武者震いがしている」と意気込む。高校生くらいの時、佐渡に会いに舞台裏へ行きサインをもらったという大西。佐渡の自伝『僕はいかにして指揮者になったのか』を読んで、「音楽家にはこういう世界があるんだ。自分もいつか世界を目指したい」と希望をもらった憧れの存在。そのマエストロのもとで究極の役を演じることは、大西にとって感慨深い公演となる。
続いて、高野は「アンサンブルの多い《コジ・ファン・トゥッテ》に比べて、個人のアリアが多く個々の個性が前に出る作品。ドンナ・アンナは様々な解釈ができる役だからこそ、自分の中のアンナ像をはっきりと持って取り組みたい」と述べた。芯をしっかり持ちながらも、ドン・ジョヴァンニとの出会いや父親の死によって心が揺れ動くドンナ・アンナは、特にその最初のシーンの見せ方によってドン・ジョヴァンニやストーリー全体の印象も変わってくる重要な役どころ。物語が進むにつれアンナの心情がどう変化していくのか高野の役づくりに注目したい。
演出は、同シリーズ《コジ・ファン・トゥッテ》《フィガロの結婚》で好評を博し、メトロポリタン歌劇場の首席演出家を務めたデヴィッド・ニースが手がける。会見に寄せたエッセイには「自らの行いがもたらす結果を恐れない男こそ、恐らく最も危険な人物」と綴っている。「ドン・ジョヴァンニというキャラクターの最大の魅力は、“何事にも束縛されずに欲望のままに生きてみたい”と、禁断の果実を味わい尽くすことを人生の目標に掲げる彼の生き方にある」と語るニースのもと、いったいどんな舞台に仕上がるのか期待が高まる。
撮影:飯島隆/提供:兵庫県立芸術文化センター
【Information】
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2023
モーツァルト:歌劇 《ドン・ジョヴァンニ》
(全2幕/イタリア語上演・日本語字幕付/新制作)
2023.7/14(金)、7/15(土)、7/16(日)、7/17(月・祝)、7/19(水)、7/20(木)、7/22(土)、7/23(日)
各日14:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
演出:デヴィッド・ニース
指揮:佐渡裕
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
合唱:ひょうごプロデュースオペラ合唱団
出演
ドン・ジョヴァンニ:ジョシュア・ホプキンズ★ 大西宇宙☆
騎士長:デヴィッド・リー★ 妻屋秀和☆
ドンナ・アンナ:ミシェル・ブラッドリー★ 高野百合絵☆
ドン・オッターヴィオ:デヴィッド・ポルティーヨ★ 城宏憲☆
ドンナ・エルヴィーラ:ハイディ・ストーバー★ 池田香織☆
レポレッロ:ルカ・ピサローニ★ 平野和☆
マゼット:近藤圭★ 森雅史☆
ツェルリーナ:アレクサンドラ・オルチク★ 小林沙羅☆
★7/14, 7/16, 7/19, 7/22 ☆7/15, 7/17, 7/20, 7/23
2/26(日)発売
問:芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255
兵庫県立芸術文化センター
https://www1.gcenter-hyogo.jp