こだわりのプログラムで創るバラエティ豊かな夜の世界
ピアニストの福間洸太朗は、世界各地での演奏活動をはじめ、多彩なレパートリーを活かしたプログラムのレコーディングも重ね、ピアニストとしての技術、音楽性を深めてきた。近年では知られざるピアノ曲を名演奏家の演奏で紹介する「レア・ピアノミュージック」をプロデュースするなど、新たな試みにも積極的。常にひらめきに満ちた彼のリサイタルは創意に溢れたテーマ性を持っており、今回も「夜」をテーマに、福間らしさが随所に見られるプログラムを届けてくれる。
「あまのじゃく精神を発揮して(笑)、アフタヌーン・コンサートにあえて“夜”をもってきました。また、2023年のナントのラ・フォル・ジュルネ(LFJ)のテーマが“夜”ということで、そこで演奏するプログラムをもとにしています。前半はLFJで演奏する楽曲で、後半は今回の日本とパリでのリサイタルのためにセレクトしたものです」
前半はバッハにモーツァルト、シューマンなどドイツ系の作品が並び、後半にはフォーレにドビュッシー、ラヴェルといったフランス系の作品に加え、ショパンが選ばれた。新たに演奏する曲も多いという。
「フォーレのノクターン第5番は初披露ですし、ラヴェルの『夜のガスパール』の〈オンディーヌ〉も日本では初めて演奏します。19歳のときにコンクールで弾いて以来なので、かなり久しぶりに挑む楽曲です」
「夜」をテーマにしたプログラムだが、決して静かな作品や瞑想的なものばかりではない。実にバラエティ豊かな雰囲気の作品が並んでいる。このあたりにも福間ならではのこだわりが詰まっている。
「J.S.バッハ=ジロティの『G線上のアリア』やシューマンの〈トロイメライ〉(『子供の情景』より)などは、穏やかな夜の様相が見えるものですが、モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』やグリュンフェルトの『ウィーンの夜会』は、宮廷の娯楽や舞踏会の様子など、当時ならではの夜の風景を感じていただけるものとして入れました。また、ドイツとフランスや、ショパンとフォーレ、二人による“ノクターン”など、様々な対比もお楽しみいただきたいと思っています」
なお、今回演奏される「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は福間による編曲作品となる。華麗さと繊細さをあわせもつ彼のピアニズムが活きた編曲に期待が膨らむ。演奏家としてはもちろんだが、編曲家としてもますます進化を遂げていく福間の今後に注目していきたい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2023年2月号より)
アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2022-2023 福間洸太朗 ピアノ・リサイタル
2023.3/4(土)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp