社会を映し出す音楽のゆくえに耳を傾けて
佐藤紀雄率いるアンサンブル・ノマドの進化は止まらない。2022年で結成25周年となったこの精鋭アンサンブルは、腕利きの奏者たち自身が演奏したいと思う曲を厳選し、ひとひねりある妙技をくり広げてきた。
第77回定期である2月5日のテーマは「ノマドの時代」。世界初演される西村朗の「ロプノール(彷徨える湖)−10奏者のための」(2022)、近藤譲の「合歓」(2020)といった実力派邦人作品に加え、アルゼンチンのアレハンドロ・ビニャオ、スペインのベネト・カサブランカスの作品他で構成されている。「ノマドの時代」とは、ビニャオ作品のタイトルで、このアンサンブルへの賛辞と不安定な現代社会を照射する意味が込められているという。ビニャオは打楽器奏者としても著名だが、「ノマドの時代」の多彩でヴィヴィッドな音楽に期待したい。
新鋭作曲家たちの活動も後押ししてきたアンサンブル・ノマド。今回は、2021年に武満徹作曲賞を受賞し、今注目の根岸宏輔による「うす明かりの中に」(2022)の世界初演を予定している。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2023年2月号より)
2023.2/5(日)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:キーノート0422-44-1165
https://www.ensemble-nomad.com