どりーむコンサート Vol.124 悲運が生んだ奇跡 プロコフィエフ名曲選

情熱マエストロと若き天才が織りなすロシア音楽2大傑作

 コンサートのサブタイトル「悲運が生んだ奇跡」は、二つの世界大戦やロシア革命、世界恐慌などさまざまな悲運に振り回されながらも、数々の名曲を生み出したプロコフィエフを表す。ヴァイオリン協奏曲第1番の完成直後、1917年にロシアで十月革命が起こり、翌年プロコフィエフは日本を経由してアメリカに行き、1933年まで戻らなかった。作品は古典性と現代的傾向のバランスが完璧で、抒情性も豊かな彼の特長がすべて網羅された傑作。服部百音が弾くプロコフィエフは、2年前にヴァイオリン・ソナタ第1番を聴いたが、エネルギッシュな高揚感と繊細な美しさが両立して見事だった。その卓越した表現力は協奏曲でも発揮されるに違いない。井上道義は、服部が「いつもの100倍ぐらいの濃度で頭からのめり込むことができた」と語る最強の共演者。その時のショスタコーヴィチ作曲ヴァイオリン協奏曲第1番の凄絶な演奏は今も記憶に新しい。曲は異なるが、今回もスリリングな演奏になることは必至だ。

 バレエ音楽「シンデレラ」について井上は「プロコフィエフの最大傑作と思える。交響曲より音楽に無理がない」と言う。プロコフィエフは、17世紀フランスの童話作家シャルル・ペローの原作に抒情的で旋律美にあふれた音楽とともに、独特の奇抜な楽想も加えた。シンデレラと王子が結ばれるおとぎ話の順番に沿ってプログラムされた井上自身によるセレクションを、若き日にバレエ・ダンサーを目指した井上が鮮やかに聴かせることだろう。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2023年2月号より)

2023.2/4(土)14:00 府中の森芸術劇場 どりーむホール
問:チケットふちゅう042-333-9999 
http://www.fuchu-cpf.or.jp/theater/