ピアノの詩人が十八番のプログラムを色彩豊かにつむぐ
フランスの実力派ピアニスト、エマニュエル・シュトロッセは、色彩感と多種多様な表現、温かな音色を特徴とする、ピアノ好きに愛されるピアニスト。フランス作品のほか、ベートーヴェン、シューベルトの作品を得意とし、「ピアノの詩人」と称される馨しく情感あふれる響きで聴き手を作品の内奥へと導く。
ソロはもちろんのこと、室内楽の名手としても知られ、ヨーロッパの著名な音楽祭に招かれてさまざまな音楽家と共演。共演者からは再度のオファーが届き、より濃密な音の対話を繰り広げ、室内楽の醍醐味を伝える。
今回の来日では、自家薬籠中のベートーヴェン、シューベルト、シューマンがプログラムに組まれ、とりわけシャブリエが聴きどころである。シュトロッセはシャブリエ「10の絵画風小品」の録音も行っており、粋で洒脱、また軽快でエスプリに富む演奏を披露。それをナマで聴くことができるチャンス到来だ。
シューベルトの「3つのピアノ曲」D946も、シュトロッセの磨き抜かれた奏法と解釈が堪能できる。彼が素朴さと感情の昂りの対比をいかに弾き進めていくか、興味は尽きない。
オープニングに登場するベートーヴェンの「月光ソナタ」から、即座にシュトロッセの世界へといざなわれる。かろやかなピアニズムはフランス絵画の淡い色彩や微妙なグラデーション、官能的な美を連想させる。その音を全身にまとうと、えもいわれぬフランスの美質に心が浮遊していき、幸せ色に包まれる。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2023年1月号より)
2023.1/14(土)14:00 国分寺市立いずみホール
問:国分寺市立いずみホール042-323-1491
https://www.kokubunji-izumihall.jp
1/22(日)14:00 広島/三次市民ホールきりり
問:三次市民ホールきりり0824-62-2222
https://www.kiriri.org