天から降る“何か”を受け止め、音へと紡ぎ換えてゆくよう。大阪交響楽団首席ソロ・コンマスを務める一方、ソリストとしても活躍する森下幸路の最新録音は、「春」がテーマ。ベートーヴェンとドビュッシー、外山雄三のソナタを軸に、陽光を感じさせる小品を配した。透明感に満ちた美音と、時折交える上品なポルタメント。数多い共演で気心の知れたピアノの川畑陽子とのデュオは、もはや“一体の楽器”かのごとき連携の良さ。外山は、33歳で書いた自作の快演に「この曲を完成させてくれた」と賛辞を寄せる。「世界の“春”が待ち遠しい」と綴る森下。当盤には「希望」も詰まっている。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2023年1月号より)
【information】
CD『SPRING/森下幸路&川畑陽子』
ベートーヴェン:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第5番「春」/フォーレ:5月/ドビュッシー:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ/外山雄三:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ/ラフマニノフ(クライスラー編):ピアノ協奏曲第2番より「祈り」/クライスラー:美しきロスマリン 他
森下幸路(ヴァイオリン)
川畑陽子(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7977 ¥2750(税込)