東京文化会館シアター・デビュー・プログラム オペラ《ショパン》(新制作)

時代と作曲家を「オペラ」で味わうユニークな企画

 自分の人生をオペラに投影した作曲家は少なくないが、ある作曲家の人生と作品がオペラになった例はとても珍しい。

 イタリアの作曲家ジャコモ・オレーフィチェ(1865-1922)の《ショパン》(1901)は、そんなユニークな作品だ。主人公はもちろん、あのショパン。若くして祖国ポーランドを離れ、パリで活躍し、恋をし、旅をし、やがて死を迎える。その全編を貫くのは、ロシアに蹂躙された祖国への思いだ。A.オルヴィエートの台本は、異国にあっても祖国ポーランドを想い、苦しむショパンを、フィクションを交えてファンタジー豊かに描いている。

 本作の大きな特徴は、ショパンの音楽を紹介することに重きが置かれていることだ。全4幕に、協奏曲からマズルカまで、なんと約80曲ものショパン作品が盛り込まれている。彼の人生、作品、そして時代背景を知るにはうってつけではないだろうか。

 上演の稀な作品だが、この度、東京文化会館が「シアター・デビュー・プログラム」として取り上げるという。誰もが名前を知るショパン、誰もがどこかで聴いたメロディが「オペラ」として構成されているのを体験するのはワクワクするし、オペラデビューとしてもお勧めだ。伴奏はピアノの松本和将を中心に、東京音楽コンクールで上位入賞したホープ、ヴァイオリンの篠原悠那、チェロの上村文乃が務める。山本康寛、佐藤美枝子ら日本を代表する歌手陣に、今一番乗っているオペラ指揮者の園田隆一郎、作品を掘り下げ、ヴィヴィッドに生かす手腕で絶賛される演出家の岩田達宗と、これ以上望めないキャスティングも魅力だ。劇場で出会う新鮮なショパン像に期待大である。
文:加藤浩子
(ぶらあぼ2022年10月号より)

2022.12/17(土)14:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp