サロン・コンサート 岡田奏(ピアノ)
安川加壽子生誕100年に寄せてー

歴史を紡いできた特別な空間で堪能するフランス・プログラム

文:柴田克彦

 明治時代から100年以上の歴史を歩んできた国指定重要文化財・旧松本邸(=会場の西日本工業倶楽部)で開かれるサロン・コンサートは、北九州国際音楽祭の名物企画。今年はピアノの岡田奏が「安川加壽子生誕100年に寄せて」と題した公演を行う。

岡田奏(c)Kazashito Nakamura

 安川は、エレガントな演奏で一時代を築き、国際的な奏者を多数育てた、日本ピアノ界の大功労者。フランスで育ち、10歳でパリ音楽院に入学した彼女は、日本におけるフランス音楽の普及にとりわけ功績があった。岡田も、15歳で渡仏してパリ音楽院を最優秀で修了し、プーランク国際ほか多数のコンクールで実績をあげた、本公演に相応しい実力者。クープラン、ラモーの佳品やドビュッシーの有名曲が並ぶフランス・プログラムも、趣旨にピタリと沿っている。なお当日は、会場が安川の親族が建てた洋館ゆえに、安川が使用していた楽器の展示も行われる。欧州&日本で活躍する現代の俊英の清新な演奏を満喫しながら、歴史的な異空間で往年の大家に思いを馳せる……まさにここでしか味わえない特別な時間だ。

西日本工業倶楽部

■サロン・コンサート 岡田奏(ピアノ)安川加壽子生誕100年に寄せてー
2022.11/2(水)14:00 西日本工業倶楽部

●曲目
クープラン:クラヴサン曲集第2巻 第6組曲より 神秘的なバリケード
ラモー:新クラヴサン組曲集第1番(第4組曲)より ガヴォットと6つのドゥーブル
ドビュッシー:ベルガマスク組曲より 月の光
ドビュッシー : 喜びの島 他
●料金
一般・U-25¥4,000

♪ 西日本工業倶楽部や過去のサロン・コンサートについては、エッセイ「音楽評論家・寺西基之の音楽祭逍遥」でもご紹介しています