名手がクインテットと奏でる協奏曲の名作
横浜市の18区それぞれにあるホールや文化施設で展開されている「横浜18区コンサート」。2016年の「横浜音祭り」から生まれたシリーズだが、横浜みなとみらいホール(この秋リニューアルオープン)の改修工事による休館中には、横浜にゆかりのあるアーティストやオーケストラメンバーが登場して、協奏曲の室内楽版など充実の演奏を披露し続けている。
8月に都筑区の都筑公会堂、および中区の神奈川県民ホールの舞台に登場するのは、ソリストとしてピアニストの河村尚子、そして読売日本交響楽団メンバーによる弦楽五重奏という豪華な組み合わせだ。河村は2006年ミュンヘン国際コンクール第2位、07年クララ・ハスキル国際コンクール優勝といった目覚ましい活躍ぶりを見せ、08年の横浜市招待国際ピアノ演奏会に招聘されたピアニスト。また読響は、23年から横浜みなとみらいホールにて「みなとみらいホリデー名曲シリーズ」を再開予定である。その両者がタッグを組んで取り上げるのは、シューマンのピアノ協奏曲イ短調の室内楽版だ。ドイツ・ロマン派の語法を熟知する河村のピアノ、そして各楽器の表現が明確に伝わる弦楽五重奏による編成が、シューマンが唯一残したピアノ協奏曲の魅力をドラマティックに届けてくれるに違いない。コンサート前半には弦楽五重奏のみでモーツァルトとドヴォルザークの名曲も演奏される。夏の午後のひと時、名手たちの奏でる響きに耳を澄ませたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2022年8月号より)
2022.8/29(月)15:00 都筑公会堂
8/30(火)15:00 神奈川県民ホール (小)
問:横浜みなとみらいホール仮事務所チケットセンター045-682-2000
https://yokohama-minatomiraihall.jp