名匠と東京音楽コンクール入賞者2人の華々しい競演
東京文化会館が主催する《響の森》が50回目を迎える。節目の回は「傑出のブラームス」と掲げ、秋山和慶の指揮、東京都交響楽団による堂々たるブラームス・プロで、これまでの歴史と成果を聴かせる。
メインとなるのは交響曲第1番。筆者は昨夏、秋山指揮の日本センチュリー交響楽団で同曲を聴く機会があった。楽団の高い力量を余すところなく引き出し、どのパートも雄弁で美しく、バランスも絶妙。なにより全員の心がこもった温かい熱気で、同曲を初めて聴いたときの感動まで思い出され、その場にいられた幸せを噛みしめる屈指の“ブラ1”体験になった。その後も秋山は他の楽団との同曲でやはり大好評を得て、今後も複数の楽団で演奏を予定している。各地でブラームスの、しかも第1番での名演を期待されて、それを毎回成し遂げることの凄さ。この都響との“ブラ1”も格別な演奏になると確信をもって記したい。
東京文化会館で開催される東京音楽コンクールで結果を出した俊英たちがソロを務める、「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」も楽しみだ。ヴァイオリンは第5回第1位の成田達輝、チェロは第12回第2位の笹沼樹。成田はロン゠ティボー国際コンクール第2位入賞以来、世界的に活躍するヴァイオリニスト。笹沼はソロのほかにカルテット・アマービレでARDミュンヘン国際コンクール第3位など、活躍の幅が広い期待のチェリスト。盤石の秋山&都響と共に、彼らの瑞々しい名技が存分に発揮される、特別なブラームスの時間になるに違いない。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年6月号より)
2022.7/29(金)19:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
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