オーケストラ・アンサンブル金沢が指揮者陣&新シーズンラインナップを発表

 オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が4月18日、本拠地の石川県立音楽堂コンサートホールで記者発表会をおこない、2022年9月からの新たな指揮者陣および新シーズン(2022年9月〜23年7月)のラインナップを発表した。

中央:広上淳一(モニター越し)

 会見には、現在OEKアドヴァイザーを務め、2022年9月から同アーティスティック・リーダーに就任する広上淳一がリモートで出席。就任について、「楽団員や若手の指揮者たちのサポート、それから、地域の皆さんにオーケストラに対して愛着を持ってもらえるような活動に重きを置いて今後も頑張っていきたい」とコメント。

 新シーズンの指揮者陣は3名。アーティスティック・リーダーの広上を筆頭に、パーマネント・コンダクターの川瀬賢太郎、コンダクターの松井慶太という顔ぶれ。奇しくも、川瀬と松井は、広上のもとで学んだ同級生。
「若い2人の指揮者には、新しいOEKの将来を担ってほしいと思っています。在学当時から、才能豊かな学生でした。松井さんは音楽的にも感性から動くタイプで、情熱的で純粋。川瀬さんは頭脳明晰で、図書館に12時間くらいこもって、作品を歴史的な背景から勉強する習慣を持っていましたね」
 キャラクターがまったく異なる若い2人の指揮者が、OEKとどのように協働していくのかも見どころ。

 新シーズンのラインナップとして、定期はフィルハーモニー・シリーズ8公演、マイスター・シリーズ5公演、ファンタスティック・オーケストラコンサート3公演の全16公演に加え、特別公演を予定している。特に注目は、広上のアーティスティック・リーダー就任披露シリーズ。OEK永久名誉音楽監督の故・岩城宏之の生誕90年を記念した「岩城宏之メモリアルコンサート」をはじめ、9月の定期ではコダーイの「ガランタ舞曲」、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」、ソリストに神尾真由子(ヴァイオリン)を迎えて情熱のピアソラを聴かせる。古典派プログラムを堪能できる来年3月の定期には、ヴァイオリンの米元響子がモーツァルトの協奏曲第4番を披露。2002年にロン・ティボー国際コンクールで入賞した当時から米元を知る広上は、「共演が楽しみです。シューベルトの交響曲第5番も個人的に思い入れが深い作品。モーツァルト、シューベルト、ベートーヴェンの美しさを味わっていただきたい」と語った。
 「2021-2022 コンポーザー・オブ・ザ・イヤー」には、細川俊夫が選出された。10月に、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団との共同委嘱作品「セレモニー フルートとオーケストラのための」が、沖澤のどか指揮、OEK初共演のエマニュエル・パユ(フルート)によって日本初演される。作曲家とOEKが連携して、未来の宝となる新作を世に残すために始まったこのプロジェクトでは、これまで多くの作品が委嘱・演奏されてきたが、今回も大きな話題となりそうだ。
 来年4月にはフランスの巨匠ジャン゠クロード・カサドシュがOEKに初登場。現在86歳のカサドシュ、2021年5月の来日がかなわず、待ちに待った公演がようやく実現する。
 続く7月には、OEK初共演となるイギリスのライアン・ウィグルスワースがベートーヴェンの交響曲第6番やブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番をとりあげ、今回日本デビューを果たすランドル・グーズビーがブルッフの独奏を務める。そのほか、鈴木優人によるハイドン「チェンバロ協奏曲 Hob.XVIII-11」弾き振り、OEK初登場のパリ室内管音楽監督ラルス・フォークトによるベートーヴェンの協奏曲弾き振り、指揮者・クラリネット奏者・作曲家の顔を持つイェルク・ヴィトマンの多才ぶりを堪能する公演など、注目のプログラムが予定されている。

 創立以来、海外との交流も長く、曲目・出演者ともにバラエティに富んだ演目を金沢の地から世界に発信してきたOEK。新シーズンも工夫を凝らした多彩なプログラムが並び、早くも秋の到来が待ち遠しい。

オーケストラ・アンサンブル金沢
https://www.oek.jp