外囿祥一郎はヴィルトゥオジティと音楽性によって、ソロ楽器としてのユーフォニアムの可能性を切り開いてきた。その広がりを堪能できる一枚だ。冒頭、ドスの「パルス」の、ピアノとの間に織りなされる緊迫感あふれる表現には本格派の貫禄あり。コンチェルトのリダクション版という解説に納得。《運命の力》、「夢のあとに」、「スコットランドの釣鐘草」といった聴きなじんだ旋律が、金管楽器とはにわかには信じがたいほど、滑らかかつ豊かに歌われる。その才能に魅せられ、伊藤康英、加羽沢美濃、天野正道といった人気作曲家たちもオリジナル曲を寄せているが、どれも伸びやかな歌心にあふれている。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年2月号より)
【information】
SACD『リアル・ユーフォニアムⅣ 波の綾/外囿祥一郎&藤原亜美』
ドス:パルス/ヴェルディ(松本望編):オペラ《運命の力》によるグランド・ファンタジー/フォーレ:夢のあとに/ソレル(山田武彦編):ファンダンゴ/伊藤康英:3つのロマンス/プライヤー:スコットランドの釣鐘草/加羽沢美濃:波の綾/ポンセ(加羽沢編):エストレリータ/天野正道:無窮動
外囿祥一郎(ユーフォニアム)
藤原亜美(ピアノ)
妙音舎
MYCL-00015 ¥3520(税込)