In memoriam 神谷郁代

 日本を代表するピアニストの一人、神谷郁代さんが10月6日、肺炎のため死去した。75歳。

Ikuyo Kamiya

 群馬県生まれ。中学から桐朋学園で学び、井口愛子に師事。高校在学中の1964年、毎日(日本)音楽コンクールで第1位。卒業後、ドイツのエッセン音楽院に留学、クラウス・ヘルヴィヒ、ステファン・アスケナーゼに師事した。1972年のエリザベート国際音楽コンクール入賞で注目されて、ヨーロッパ各地で活発に演奏を開始し、特にロンドンでのデビューは、辛口で知られる現地の新聞からも高い評価を得た。

 その後、内外のオーケストラで小澤征爾、若杉弘、ホルスト・シュタインらと数多く共演。日本フィルの創立30周年ヨーロッパ・ツアーにはソリストとして同行した。

 ドイツ古典からエリック・サティなどフランス近代まで幅広いレパートリーで知られたが、現代作品にも積極的に取り組み、野田暉行の尾高賞受賞作のピアノ協奏曲をNHK交響楽団と初演している。

 また、RCAレーベルに録音したベートーヴェンの「熱情」ソナタが、アメリカで2万枚を越えるセールスを記録して話題になった。以後、フォンテック、カメラータ・トウキョウ、fine N&Fから活発にリリース。モスクワ放送響とのベートーヴェンやグリーグの協奏曲、ツェルニーの「48の前奏曲とフーガ」の世界初録音などがある。

 京都市立芸術大学教授も務め、後進の指導にも尽力した。