びわ湖ホールがサリヴァンのコミック・オペラ《ミカド》を上演へ

 びわ湖ホール声楽アンサンブルが園田隆一郎の指揮のもと、8月5・6日のびわ湖ホールを皮切りに、サリヴァンのコミック・オペラ《ミカド》を日本語上演する。8月26・27日には新国立劇場でも上演する。演出・訳詞は中村敬一。
 本公演に先立ち7月9日に新国立劇場でプレトークが行われた。
(2017.7.9 新国立劇場オペラパレス ホワイエ Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

左)園田隆一郎 右)中村敬一

 コミック・オペラ《ミカド》は、19世紀末のロンドンで大人気を誇ったウィリアム・ギルバート(台本)とアーサー・サリヴァン(作曲)のコンビによるオペラ作品のひとつ。彼らの作はミュージカルの元祖とも言われ、主としてサヴォイ劇場で上演されたことから「サヴォイ・オペラ」と呼ばれている。
 同時期にパリやウィーンでオペレッタが盛んになるなか、いずれは英国発のオペレッタと認められるようにとの期待から「コミック・オペラ」とも呼んだ。

 1885年に初演された《ミカド》は、当時ヨーロッパで流行したジャポニスム(日本趣味)に触発された作品で、マスカーニのオペラ《イリス》(1898年初演)、プッチーニのオペラ《蝶々夫人》(1904年初演)に先がけたものとも言えるが、その実、当時の英国社会の上流階級や支配階級に対する辛辣な風刺を含んだ作品で、舞台設定をはるか遠く誰も行ったことがないような「未知の国」である日本に設定することで批判をかわしたといわれている。

 ロンドンではロングヒットとなった《ミカド》だが、戦前の日本では上演されたことがなく、日本初演は1946年、GHQでのもので、一般向け公演としては1948年、長門美保歌劇団が関西で初演している。

 プレトークでは、演出・訳詞の中村敬一と指揮の園田隆一郎が、それぞれの視点で音楽、作品の魅力について語った。


■園田隆一郎
 形式はヴァイルの《三文オペラ》とも似ているが、とても美しい音楽。均整がとれ、丁寧に書かれている。アリアというよりも「有節歌曲」と言ったほうがよい、軽快なリズムにのった親しみやすい「ソング」で成り立っている。

 日本を含むオリエンタリズムに向いた作品としては《ミカド》以前にビゼーの《真珠採り》、それ以降はドリーブの《ラクメ》、プッチーニの《蝶々夫人》《トゥーランドット》、オペレッタではレハールの《微笑みの国》などがある。

 この作品にも日本的な旋律がちりばめられている。日本風なものもあるけれども、実際に<宮さん宮さん>のように、旋律をそのまま使ったりもしている。<宮さん宮さん>は《蝶々夫人》でも使われている。

 中村さんの訳詞は日本語で歌ってみて違和感を感じることがないような訳詞で、とても歌いやすく訳してくださっている。
 音楽はシンプルな二管編成。ベートーヴェンの初期作品のような構成なので、そのなかに皮肉だとかそういったニュアンスを出すのに指揮する上では工夫が必要かと思っている。

■中村敬一
 オペレッタが成熟するなか、ミュージカルのような形式をもった作品。
 日本を侮辱しているオペラととらえる向きもあったが、よくよく考えると、ヴェルディなどのオペラでもイタリアの史実や社会世相を反映しながらも舞台をイギリスに置き換えたりもしている。それと同様のことをギルバート&サリヴァンも考えたのだろう。

 台本の原題は『THE MIKADO OR,THE TOWN OF TITIPU』となっているが、ここで設定されているTITIPUという街は、秩父(TITIBU)が訛ったのではないかと考えられている。
 当時のヨーロッパから見れば中国も韓国もベトナムも日本も同じアジアでひとくくりにとらえられていて、登場人物の固有名詞もヤムヤム、ナンキプーとか、どこの国の人物かわからないような名前になっている。

 関西発のオペラということでオーソドックスな日本風な衣裳でなく、外国人が思い描く日本、というテーマのもと、ナンキプーはストリートミュージシャン風、プーバーもヒョウ柄、、、、外国人の日本ツアーのガイドWEBサイトをもじったような、そんな風景が舞台に出せたら面白いんじゃないかと思っている。

 日本語上演ということで訳詞を考えるにあたって、たくさん出てくる風刺については当時と現代で意味がわかりづらいところもあり、それらは現代でも意味が通じるように配慮している。
 オペラを上演するにあたって、原語上演と当地の言葉での上演、それぞれあっていいと思う。ワーグナーの作品も当時はイタリアではイタリア語で歌われたりしていた。

 びわ湖ホール声楽アンサンブルは、滋賀県の各学校をまわっての「学校巡回公演」もあり、そういった意味でも日本語での上演は必須と考えている。小粒だけれども質の高い上演ができている。

                           ♪♪♪♪
 トークに続き、園田隆一郎のピアノ伴奏で、飯嶋幸子(ヤムヤム役)、島影聖人(ナンキプー役アンダースタディ)と迎肇聡(ココ役)が歌を披露した。

ココ:迎 肇聡

ヤムヤム:飯嶋幸子

左から)迎 肇聡(ココ) 飯嶋幸子(ヤムヤム)

◆びわ湖ホール オペラへの招待サリヴァン/コミック・オペラ《ミカド》
(全2幕・日本語上演/日本語・英語字幕付 予定上演時間:約2時間30分(休憩含む))
2017年8/5(土)14:00、8/6(日)14:00 びわ湖ホール(中)

◆平成29年度 新国立劇場 地域招聘オペラ公演 びわ湖ホールサリヴァン/コミック・オペラ《ミカド》
(全2幕・日本語上演/日本語・英語字幕付 予定上演時間:約2時間30分(休憩含む))
2017年8/26(土)16:00、8/27(日)14:00 新国立劇場(中)

指揮:園田隆一郎
演出・訳詞:中村敬一

美術:増田寿子
照明:山本英明
衣裳:下斗米雪子
振付:佐藤ミツル
音響:押谷征仁(滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール)
舞台監督:牧野 優(滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール)

出演:びわ湖ホール声楽アンサンブル
ミカド:松森 治 *
ナンキプー:二塚直紀 *
ココ:迎 肇聡 *
プーバー:竹内直紀 *
ピシュタッシュ:五島真澄
ヤムヤム:飯嶋幸子
ほか
* びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー

管弦楽:日本センチュリー交響楽団