細川俊夫のオペラ《松風》が日本初演へ、サシャ・ヴァルツ演出・振付、美術に塩田千春

新国立劇場 開場20周年記念 2017/18シーズン

新国立劇場オペラは2017/18シーズンに、ワーグナー《神々の黄昏》、細川俊夫《松風》、ベートーヴェン《フィデリオ》の新制作3演目と再演7演目を含めた10演目を上演する。なかでも、日本初演となる細川俊夫の《松風》は、演出に世界有数の振付家サシャ・ヴァルツが、美術に塩田千春が参加するなど、同シーズン随一の話題となりそうだ。
去る1月12日、新国立劇場で行われたラインアップ説明会では、最後のシーズンとなる飯守泰次郎芸術監督自らがそれぞれの作品の魅力を語った。
(2017.1.12 新国立劇場 Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

■新制作・日本初演/細川俊夫《松風》
「2016/17シーズンは日本人作品の上演を断念しましたが、本シーズンでは、細川俊夫《松風》を上演します。芸術参与として新国立劇場に関わっていた頃からの念願がついに叶い、非常に嬉しく思っております。日本人作品の上演は新国立劇場の大切な役割だと思っています」

細川俊夫《松風》モネ劇場公演より (c)Bernd Uhlig
細川俊夫《松風》モネ劇場公演より (c)Bernd Uhlig
細川俊夫《松風》モネ劇場公演より (c)Bernd Uhlig
細川俊夫《松風》モネ劇場公演より (c)Bernd Uhlig
細川俊夫《松風》モネ劇場公演より (c)Bernd Uhlig
細川俊夫《松風》モネ劇場公演より (c)Bernd Uhlig

日本初演となる細川俊夫《松風》は、世阿弥による能の名作をもとに気鋭の若手作家ハンナ・デュブゲンがドイツ語の台本を執筆、作曲家の意志である「舞踊とオペラが融合した新しい作品形態を最も的確に実現」すべく、現代ドイツを代表する振付家サシャ・ヴァルツが演出、ピア・マイヤー=シュリーバーと塩田千春が美術を担当した1幕5場のオペラ。2011年5月にベルギー王立モネ劇場で世界初演(サシャ・ヴァルツ&ゲスツ、モネ劇場、ポーランド国立歌劇場、ルクセンブルク歌劇場、ベルリン国立歌劇場による共同制作)、以後各地で再演がなされ16年10月には香港の『New Vision Arts Festival 新視野藝術節』オープニングでアジア初演された。

作曲者自身が最も信頼するサシャ・ヴァルツは、《ディドとエネアス》などですでにオペラでの振付と演出を行い、音楽と舞踊、声楽が一体となった「コレオグラフィック・オペラ」という様式を確立。歌手やヴォーカル・アンサンブルにも高度な舞踊力を要求する作品だが「サシャ・ヴァルツ&ゲスツのダンスだけでなく、初演から参加しているシャルロッテ・ヘッレカントほか歌手陣も、歌唱力はもちろんのことダンサーと一緒に動ける高度な舞踊力を持ち合わせており、作曲者、演出家から厚い信頼を得ています」
無数の糸を使った巨大なインスタレーションで国際的に高い評価を得ている塩田千春の美術にも注目が集まる。

パーセル《ディドとエネアス》ベルリン国立歌劇場公演より (c)Sebastian Bolesch
パーセル《ディドとエネアス》ベルリン国立歌劇場公演より
(c)Sebastian Bolesch
パーセル《ディドとエネアス》ベルリン国立歌劇場公演より (c)Sebastian Bolesch
パーセル《ディドとエネアス》ベルリン国立歌劇場公演より
(c)Sebastian Bolesch

■新制作/ワーグナー《神々の黄昏》
シーズンの幕開けは、ワーグナー《神々の黄昏》。
「3年がかりで取り組んできた《ニーベルングの指環》が、いよいよ《神々の黄昏》でこの巨大な物語を締めくくることとなります。今年6月に上演される《ジークフリート》題名役に出演するステファン・グールドが、いよいよ本来のレパートリーのまさに中核である《神々の黄昏》のジークフリートを披露します。
ペトラ・ラングは、15/16シーズンの《ローエングリン》で迫力あるオルトルートを披露しており、どのようなブリュンヒルデになるか楽しみです。グンター役のアントン・ケレミチェフは期待の若手で、既にブタペストで多くのワーグナー作品を披露しています。
ハーゲン役には、《ワルキューレ》のフンディング役で素晴らしい歌声を披露したアルベルト・ペーゼンドルファー。ペーゼンドルファーは、11年の2つのオペラ雑誌でハーゲン役のベスト歌手に選出されています。
ヴァルトラウテ役は、ヴァルトラウト・マイヤー。ワーグナー歌手として世界に名を轟かしていますが、度重なる出演交渉がようやく実り、新国立劇場初登場が実現しました。読売日本交響楽団が新国立劇場に初登場となります」

■新国立劇場開場20周年記念特別公演・新制作/ベートーヴェン《フィデリオ》
「ベートーヴェンの唯一のオペラ《フィデリオ》は、最も深い精神性と高貴な理想を表現した、まさに特別な演目であり、大きな節目や重要な記念に際して取り上げられる伝統があります。開場20周年に最もふさわしいこの作品を、近年大きな注目を集める演出家で、バイロイト音楽祭総監督を務めるカタリーナ・ワーグナーを迎えて新制作で上演します。彼女は15年バイロイト音楽祭《トリスタンとイゾルデ》で高い評価を得ており、これからの世界のオペラ界をリードしていく演出家ですが、新国立劇場初登場に際し、ワーグナーでなく、あえてドイツ音楽の根本ともいえるベートーヴェンを選びました。
フロレスタン役はステファン・グールド。《リング》のヘルデン・テノールを次から次へと歌った後のこの役。レオノーレ役はリカルダ・メルバート。彼女ほど発声もしっかりしていてよく音楽を理解し、深く歌い込む歌い手はなかなか見つからない。レオノーレ役は、徹底的な技術を必要とします。ベートーヴェンはとんでもなく難しいことを書いているわけで、彼女に勝るレオノーレ役はみつからない。素晴らしいレオノーレ役を歌ってくれるに違いありません。ウィーンでレオノーレ役を歌った後、新国立劇場に駆けつけてくれます。ロッコ役の妻屋秀和は、演技歌唱力ともに国際的トップクラスの歌手です」

■ヴェルディ《椿姫》
「ヴァンサン・ブサールによる美しい演出と衣裳で、15年の初演が好評だった作品」

■R.シュトラウス《ばらの騎士》
「オクタヴィアンとして人気絶頂のダニエラ・シンドラムが初登場。指揮はヴェテランのウルフ・シルマーです」

■J.シュトラウスⅡ《こうもり》
「ウィーンの香り溢れるお馴染みのキャスト。指揮はウィーン生まれのヴェテラン、アルフレート・エシュヴェ」

■オッフェンバック《ホフマン物語》
「主役ホフマンは昨年《ウェルテル》で大成功をおさめたディミトリー・コルチャック。4つの悪役では世界を席巻する注目の歌手トマス・コニエチュニーが初登場します。歌手であり、俳優でもある彼の巧みな芝居がとてもたのしみ。指揮のセバスティアン・ルランは、フランス音楽の正統派指揮者として若くして地位を築いておりオッフェンバック研究の第一人者」

■ドニゼッティ《愛の妙薬》
「世界最高のアディーナ役の一人であるルーシー・クロウが初登場。初登場の指揮ギレルモ・ガルシア・カルヴォはレパートリーも広く、ウィーン国立歌劇場の常連指揮者」

■新国立劇場開場20周年記念特別公演・ヴェルディ《アイーダ》
「アイーダ役のイム・セギョンとラダメス役のナジミディン・マヴリャーノフの若いコンビほか、非常に国際的なキャスティング」

■プッチーニ《トスカ》
「歌姫そのものと絶賛されているキャサリン・ネーグルスタッドが新国立劇場初登場。初登場の指揮ロレンツォ・ヴィオッティは、新時代の指揮者として注目されます。若くして亡くなったスター指揮者マルチェロ・ヴィオッティの息子で、天才といわれておりたいへん期待できる人。びわ湖ホールとの提携公演で、新国立劇場での公演と同じキャストで、びわ湖ホールでも上演が予定されています。合唱はびわ湖ホール声楽アンサンブルが新国立劇場合唱団とともに出演します」

1月22日には、飯守泰次郎オペラ芸術監督による新シーズン演目説明会が《カルメン》(14:00開演 予定上演時間:約3時間35分)公演終了後、新国立劇場オペラパレス客席で行われる(全席自由席・予約不要)。

新国立劇場2017/2018シーズンセット券は、会員優先受付が2月28日(火)まで、一般先行受付が3月31日(金)まで。

新国立劇場オペラ
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/

【関連記事】
●新国立劇場2017/18シーズンラインナップ発表
https://ebravo.jp/archives/31425
●イーグリングの“新・くるみ割り人形”〜新国立劇場バレエ2017/18シーズン
https://ebravo.jp/archives/31432