ミシェル・ダルベルト(ピアノ)

フランスとドイツの作品で示す円熟のピアニズム

 ©Caroline Doutre
©Caroline Doutre
 12歳からパリ国立高等音楽院のヴラド・ペルルミュテールのクラスで学び、フランスものに加え、ドイツものでも高い評価をうけるミシェル・ダルベルト。円熟期を迎え、ますます深みの増した音楽を届けるフランスの名手だ。今度の来日リサイタルでは、ロマン派時代のフランスとドイツに生きた作曲家たちの作品を取り上げる。
 前半ではじめに取り上げるのは、フォーレの初期、中期、後期の作品。幻想的な輝きを持つ「バラード op.19」、より深い響きを求めるような「ノクターン第7番」、そして最晩年、聴覚に異常が現れてから書かれた最後のノクターンで、作曲家の生涯を追っていく。続けて演奏するのは、フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」。ダルベルトの確かなタッチは、一つひとつの旋律をはっきり歌い上げ、フランク晩年の傑作の美点を浮き彫りにするだろう。
 後半はブラームス。若き日の小品集である「4つのバラード op.10」は、フォーレのバラードとの対比の意味でも興味深い。そして、ブラームスがピアノの超絶技巧による華やかな表現を追求した「パガニーニの主題による変奏曲」第1巻、第2巻。歳を重ね、なお磨き続けられるテクニックで、スケールの大きな変奏曲の世界を見せてくれる。
 ダルベルトの音楽には、内面からにじみ出るような色香が漂う。今回用意されているプログラムは、彼の香り高い表現と、渋さ、華やかさのすべてが同時に味わえる内容。ピアノを聴くのにぴったりのホールで、存分に楽しみたい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ 2017年2月号から)

3/15(水)19:00 浜離宮朝日ホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
http://www.pacific-concert.co.jp/