ピーピング・トム『ファーザー』

滲み出るエロティシズムとユーモア

©Oleg Degtiarov
©Oleg Degtiarov
 いま最も注目されるベルギーのカンパニーのひとつである「ピーピング・トム」。彼らが創り出す世界は濃厚濃密。人間のダークサイドまでをもえぐり出しつつベルベットのような肌触りを持つ。まるで極上の悪夢のような作品なのである。
 これまでも3作品の来日公演があるが、いずれも高い評価を得ている。主宰者はフランス出身のフランク・シャルティエとアルゼンチン出身のガブリエラ・カリーソ。ともにベルギーのアラン・プラテル舞踊団の出身だ。
 今回は街の片隅にあるような老人ホームが舞台である。赤を基調とした美術、小さなステージの上で演奏される歌と音楽には淀んだ死の空気がまとわりつく。そこに若い男女が嵌入し、肢体が奇怪に変化するアクロバティックな動きに、空間が歪んでいく錯覚にとらわれる。強烈なエロティシズムとユーモアが滲み出し、見てはいけない秘密を「覗き見(peeping)」てしまったような気持ちになる。
 公演先で「現地キャスト」を採用するのも彼らの特色のひとつだ。今回も60〜70歳代のシニアキャストを募集し、10名程度の「日本版オリジナルキャスト」が登場する予定だ。日本ならではの舞台を楽しみに待ちたい。 
文:乗越たかお
(ぶらあぼ 2017年2月号から)

2/27(月)〜3/1(水) 世田谷パブリックシアター(03-5432-1515)、3/5(日) まつもと市民芸術館 実験劇場(0263-33-2200)、3/12(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT(0532-39-3090)、3/15(水) 兵庫県立芸術文化センター(中)(0798-68-0255)、3/18(土) びわ湖ホール(中)(077-523-7136)