高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

颯爽たる「皇帝」とブラームスの“もう一つ”の交響曲

 2016年はベルリオーズ作品を続けて取り上げた東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団だが、シーズン後半となる2017年1月〜3月にプログラムの軸となるのはベートーヴェンの作品。高関健が指揮する3月の定期演奏会には、10代後半となってますます音楽的成長が楽しみな牛田智大がソリストとして登場し、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」を演奏する。威厳のある皇帝というより、若き皇太子による爽快な音楽がホールに鳴り響くのだろうと楽しみになるが、感覚が鋭敏な10代真っ只中の音楽家だけに、期待を上回る演奏が聴ける可能性は大だろう。
 後半に演奏されるのは、そのベートーヴェンから受け継がれたドイツ音楽の系譜を守り、ロマン派音楽の王道を築き上げたブラームスのピアノ四重奏曲第1番。もちろん演奏されるのは、“もう一つの交響曲”と呼ばれることがあるほど堅牢なオーケストレーションが施されたシェーンベルク編曲版だ。数々のドラマが展開される第1楽章から、「ハンガリー舞曲集」と共通するロマ(ジプシー)風の味わいが印象的な第4楽章に至るまで、凝縮されたブラームス・サウンドを味わえるだろう。
 シェーンベルクの編曲は先輩ブラームスへの敬愛に満ちたものであり、決して奇をてらったものではないので、ブラームス・ファンを自認する方なら必聴の一作だ。高関&シティ・フィルの骨太で引き締まったサウンドが、スコアに内包される高度な精神を表出させる。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2017年1月号から)

第305回 定期演奏会
2017.3/18(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/