東京バレエ団『白鳥の湖』

ドラマ性重視の“ブルメイステル版”で告げる新時代の幕明け

左より:渡辺理恵/上野水香/川島麻実子
左より:渡辺理恵/上野水香/川島麻実子
 多種多様な演出で上演されている古典バレエ。どの版を選ぶかに、そのカンパニーが重んじるスタイルやあり方が反映される。東京バレエ団は、ブルメイステル版『白鳥の湖』を2月に初演。新芸術監督・斎藤友佳理体制の本格的なスタートとして、おおいに注目される。
 1953年初演のブルメイステル版は、物語的な首尾一貫性が特徴。宮廷の舞踏会に登場する各国の民族舞踊が、悪魔の手下とされ、王子や宮廷の人々を惑わす役目を負う。ディヴェルティスマンであるだけでなく、物語の進行上不可欠な存在として設定することで、ドラマ性を高めているのだ。また音楽はチャイコフスキーのオリジナルに立ち返り、割愛されてきた音楽を復活させている点も重要。音楽家の意図に添ってドラマを構築していく試みである。特筆すべきはオディールの登場以降の畳みかけるような展開、音楽とダンスが怒涛のように押し寄せ、王子と私たちを幻惑してしまう。
 ドラマ性を重んじながらも、過度の演劇性に傾いたり、精神分析的な解釈を行うわけではなく、あくまで古典バレエのスタイルを守った演出であるブルメイステル版の導入は、斎藤が芸術監督としてカンパニーを導いていく方向を示唆しているのではないだろうか。
 キャストは3組。トップペアの上野水香と柄本弾、抒情的な表現に優れる渡辺理恵と、ロシア・スタイルを基盤にした実力派の秋元康臣、若手のホープ、川島麻実子と岸本秀雄。
 新時代の幕明けだ。
文:守山実花
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)                         

2/5(金)〜2/7(日) 東京文化会館
問:NBSチケットセンター03-3791-8888 
http://www.thetokyoballet.com