東京バレエ団が新体制で臨む、ブルメイステル版『白鳥の湖』まもなく開幕

 シルヴィ・ギエムとのツアーを終えた東京バレエ団が2月、斎藤友佳理芸術監督就任後、新体制で臨むビックプロジェクト第1弾として、ウラジーミル・ブルメイステル版『白鳥の湖』を初演する。1月15日にリハーサルを公開、斎藤と主演する3組のダンサーらが今の心境を語った。
(取材・文:編集部 Photo:J.Otsuka/TokyoMDE リハーサル風景撮影:引地信彦)

上段左より:岸本秀雄、秋元康臣、柄本弾、ニコライ・フョードロフ 下段左より:渡辺理恵、斎藤友佳理芸術監督、上野水香、川島麻実子、マルガリータ・ルアノ
上段左より:岸本秀雄、秋元康臣、柄本弾、ニコライ・フョードロフ
下段左より:渡辺理恵、斎藤友佳理芸術監督、上野水香、川島麻実子、マルガリータ・ルアノ

斎藤友佳理芸術監督
斎藤友佳理芸術監督
 ブルメイステル版は、1953年にモスクワ音楽劇場で初演。その後、パリ・オペラ座バレエ団が『白鳥の湖』初演に同版を採用、ミラノ・スカラ座バレエ団もレパートリーにしている名作だ。チャイコフスキーと血縁関係にあたるブルメイステルは、チャイコフスキーの原曲に立ち返り、オリジナルの構想を物語に反映、音楽もオリジナルに近づけた。ドラマティック性が強い演出で、とくにスペイン、ハンガリー、イタリアと各国の民族舞踊の踊り手が次々と登場し、悪魔の手先として王子を眩惑する第3幕が特徴的。

 これまで同団ではアレクサンドル・ゴールスキー版の『白鳥の湖』を上演してきたが、斎藤が芸術監督に就任するにあたり「ブルメイステル版が東京バレエ団にふさわしいバージョンではないか」と、同団のレパートリーに加えることを考えた。

 リハーサルも佳境を迎え、斎藤が今思うことは「『白鳥の湖』は時間をかけて身体に浸透させていかなければいけない作品。全員が力を合わせ、本番に向け頑張っている。オデット、オディールを踊る彼女たちには、もっている長所を生かし、良いところを引き出せたらと思う。私にとって皆とても大事なダンサー、『白鳥の湖』を通して本物のプリンシパルになってほしい」と語った。

 リハーサルには、モスクワ音楽劇場でダンサーとして活躍、キャラクターダンスの名手であったマルガリータ・ルアノ、元ボリショイ・バレエのプリンシパル、ニコライ・フョードロフが参加。昨秋には、1953年の初演時に出演し、のちにジークフリート王子を演じた、アルカージー・ニコラエフも指導にあたっている。

 ルアノは同版について、「ブルメイステル版の踊りの魂を理解するのは、非常に難しい。第3幕のキャラクターダンスは、ただ美しい踊りをみせるだけでなく、各ダンサーが意味を分かっていることが大事。王子の意識を虜にする、その目的を遂行するためにでてきたことを分かっていてほしい」と述べ、主役を中心に指導にあたっているフョードロフは「一番難しいのは踊りの美しさを教え込むこと。3人の王子には、自分らしい王子であること望んでいる。私や他の人のマネでなく、彼らのキャラクターを生かした自分らしい、ハンドメイドの王子を演じてほしい」と期待を述べた。

 なお、装置は斎藤がイメージするものを創りたいという意向で新制作され、衣裳はモスクワ音楽劇場から借用、手直しされる。


《キャストコメント》

●オデット/オディール役

左より:上野水香、渡辺理恵、川島麻実子
左より:上野水香、渡辺理恵、川島麻実子

上野水香
「斎藤芸術監督のもとで初めてブルメイステル版に挑む、新鮮な気持ちで取り組んでいる。日々たくさんのことを教わり、皆の力で絶対良い舞台ができると信じている。ブルメイステル版は『白鳥の湖』のドラマティック性をよりスケールを大きく壮大に、より伝わりやすく、お客様に大きな力でドラマを伝えられるバージョンだと思う」

渡辺理恵
「自分のものにしながら、この後はいかに返していけるか、本番まで励んでいきたい。ブルメイステル版は最初から最後まで筋が通っていて、物語とキャラクターに納得しながら稽古をしている」

川島麻実子
「私たちペアは今回初めての役なので、手取り足取り教えていただいている。リハーサルの一分一分を大事に、自分たちで構築し積み上げて、本番は良い舞台をお届けできるよう頑張ります」

●ジークフリート王子

左より:柄本弾、秋元康臣、岸本秀雄
左より:柄本弾、秋元康臣、岸本秀雄

柄本弾
「初めて『白鳥の湖』全幕の王子役を踊ります。アドバイスを吸収し、素晴らしい本番を迎えられるよう頑張りたい」

秋元康臣
「東京バレエ団に入団し初めての主役であり、ブルメイステル版はバレエ団にとっても自分にとっても初めてのこと。今までの経験を生かしながら頑張りたい」

岸本秀雄
「ブルメイステル版は各幕につながる理にかなった流れ、ドラマティック性があるところが魅力。ご指導を吸収し、自信をもって本番に臨めるよう頑張ります」


《リハーサル風景》

左:柄本弾 右:上野水香 撮影:引地信彦
左:柄本弾 右:上野水香 撮影:引地信彦

左:渡辺理恵 右:秋元康臣 撮影:引地信彦
左:渡辺理恵 右:秋元康臣 撮影:引地信彦

左:岸本秀雄 右:川島麻実子 撮影:引地信彦
左:岸本秀雄 右:川島麻実子 撮影:引地信彦

東京バレエ団 ブルメイステル版『白鳥の湖』
東京文化会館
2/5(金)18:30 出/上野水香 柄本弾 他
2/6(土)14:00 出/渡辺理恵 秋元康臣 他
2/7(日)14:00 出/川島麻実子 岸本秀雄 他
振付/ウラジーミル・ブルメイステル レフ・イワーノフ(第2幕) 
指/アントン・グリシャニン 管/東京シティ・フィル 
¥12000〜3000 ※ペア、親子ペア割有
問:NBSチケットセンター03-3791-8888
http://www.thetokyoballet.com