映画『ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏』

名門バレエ団の衝撃のスキャンダルを描く

©2015 RED VELVET FILMS LTD. ALL RIGHTS RESERVED
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 世界中に衝撃を与えた芸術監督セルゲイ・フィーリン襲撃事件によって、バレエ・ファン以外にも広く有名になったボリショイ・バレエ団。襲撃を指示したダンサーが逮捕され、フィーリンがバレエ団に戻って来ても、同団の中に渦巻く不安や腐敗は消えない。
 BBCの百戦錬磨のカメラは、外科手術のような手さばきでメスを入れ、「カーテンの向こう側」の劇場の内部をシャープに抉り出す。監督・撮影はニック・リード。最大の緊張は、劇場総裁のウーリンとフィーリンとの容赦ない確執だ。既にダンサーの間には派閥が出来ている。総裁はバレエ監督に対して幹部会議でもびっくりするほど辛辣だ。しかし、怪我から復帰したアレクサンドロワ、引退を恐れるアラシュ、ボリショイ内部を穏やかに俯瞰するバレエ・マスターのアキーモフの言葉には、世界最高峰のこのカンパニーを支える“善意”が見える。ちなみに2016年3月以降、フィーリンのボリショイ・バレエ団芸術監督の契約は延期されないことが決定した。現代の芸術をめぐる困難が辛口のタッチで描かれた、貴重なドキュメンタリー。
文:小田島久恵
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から) 

9/19(土)〜 Bunkamuraル・シネマ ほか全国順次公開
※詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.bolshoi-babylon.jp