ハルトムート・ヘンヒェン(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

重厚な名曲を名匠で聴く不変の醍醐味


 正統派の名曲を正統派の演奏で堪能するのは、音楽鑑賞の基本であり究極でもある。ハルトムート・ヘンヒェン指揮する新日本フィル定期のブラームス・プログラムは、まさしくそれだ。ヘンヒェンは1943年ドレスデン生まれの名匠。ネーデルラント・フィルやネーデルラント・オペラ等のシェフを歴任し、ベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管等にも客演を重ねている。そして実は日本でも引く手数多の存在。メンデルスゾーン「エリア」や「第九」など、紀尾井シンフォニエッタの重要公演を再三受け持っているほか、新国立劇場の《ヴォツェック》や、読響などへの客演で好評を博し、新日本フィルでは、今年3月にモーツァルトの三大交響曲や「レクイエム」で造型確かな演奏を聴かせたばかりだ。これは本場の正統派が強く望まれていることの証しでもある。特に彼の強みはオペラの手腕。近年も、スカラ座の《さまよえるオランダ人》、英国ロイヤル・オペラの《サロメ》等々、第一線の舞台で活躍している。今回のブラームスの交響曲第1番では、こうした実績と相まってのドラマティックな表現力と堅牢な構成力が最大限に発揮される。
 もう1曲はヴァイオリン協奏曲。ソロを弾く韓国系ドイツ人、クララ=ジュミ・カンは、2010年インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクール優勝など数々の受賞歴をもち、バレンボイムから「間違いなく後世に名を残す演奏家となるだろう」と絶賛された逸材。その鮮やかなテクニックと艶やかな音色で、この名作を満喫させる。
 熟達の棒と鮮烈なソロで、ブラームスの真髄を聴こう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)

#92 多摩定期演奏会
10/24(土)15:00 パルテノン多摩
問:チケットパルテノン042-376-8181
#548 定期演奏会
10/25(日)14:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp