New Release Selection

【CD】風ぐるま2《鳥のカタコト 島のコトカタ》/波多野睦美&栃尾克樹&高橋悠治

 声と言葉を操る波多野の表現が深く美しい。詩人・時里が台本を書き下ろした「納戸の夢〜」の創作にあたって、波多野は高橋に「レチタティーヴォ(しゃべり)とアリア(歌)の間で、声が行き来するような曲を」と依頼したという。波多野は上演形態から「モノオペラ」と称しているが、高橋と時里は、おそらくは音と言葉の関係をオペラに対置して…

【CD】Soli Deo Gloria J.S.バッハ クラヴィア・ユーブング第3部/宮本とも子

 40年にわたって歴史的鍵盤楽器の演奏に取り組む、宮本とも子によるバッハ録音。今回は、宗教改革の約200年後に出版された「クラヴィーア練習曲集第3部」を、フェリス女学院にある、18世紀北ドイツの様式に基づくオルガンで弾く。ルター派の教理を凝縮、ヌメロロジー(数秘学)の網も張り巡らせた当作は、宗教から縁遠い者には難解と捉…

【SACD】ベートーヴェン:ピアノ作品集1/伊藤恵

 シューマンおよびシューベルトの録音に取り組み続けてきた伊藤恵が、先人への道筋を辿るようにして、いよいよベートーヴェンの作品集に取り掛かった。第1弾は、楽器の可能性を探り続けたベートーヴェンが、当時最新鋭のピアノで創造力を爆発させた、ソナタ第21番「ワルトシュタイン」と第23番「熱情」を収録。伊藤は20世紀イタリアが生…

【CD】ドビュッシーの夢/青柳いづみこ

 ドビュッシーが思い描いた情景、果たせなかった夢の音風景が、1925年製のベヒシュタインE型で鮮やかに蘇った。低音の渋みがかった色彩、スタッカートの心地よい音の弾みなど、不思議な魅力のある名器である。青柳いづみこは、少々古風で、且つどこか我の強い楽器を意のままに操り、「沈める寺」「ミンストレル」などの名曲から意外な表情…

【CD】鈴木輝昭 室内楽の地平

 目まぐるしく動く声部が有機体のように絡んで線の束を織り上げ、音の波となって押し寄せる。鈴木輝昭は音のアクロバティックな身振りを次々と繰り出して聴き手を圧倒するが、その関心は音色や奏法の開発というよりも、弦楽四重奏やピアノトリオといった古典的なメディアにおけるテクスチュアやドラマトゥルギーの探求へと向いている。出発点に…

【CD】お菓子と娘 橋本國彦歌曲集/小川明子&山田啓明

 選曲は橋本(1904〜49)のほぼ全創作期にまたがる。それを年代順に収録したことで改めて気づくのは、語るように歌う朗唱的な様式や、当時すでに無調的書法も持ち込んで日本歌曲史上の特異点だった橋本が、その方面の代表作である〈舞〉〈黴〉〈斑猫〉などと、〈お菓子と娘〉や一連の新民謡などの明快な様式の作品とを、並行して同時期に…

【CD】聖アポリナーレ教会のレクツィオ/山内房子

 埋もれたバロック作品を蘇演するなど、独創的な演奏活動を展開する山内房子が21年前、図書館のマイクロフィルムを通じ、偶然に知った作者不詳の聖週間の「レクツィオ」。かつて17世紀末〜18世紀前半頃にローマ・聖アポリナーレ教会で演奏され、今はロンドンに2種の写譜が現存。誰にも演奏されることなく、数百年間、眠り続けてきた。「…

【CD】ポンセ作品集 カンシオン・メヒカーナ/福田進一

 マヌエル・ポンセ没後70年を記念してのアルバム。作風の変遷を体感することのできる目配りに富んだプログラミングだが、演奏もまた磐石の一語。「組曲イ短調」サラバンドでの板についた歌い口、「3つのメキシコ民謡」で聴かせる細かい走句にまで正確で神経の通った奏楽、「ソナタ第3番」での明晰な造形と力強さ…。セゴビアにあやかってヘ…

【SACD】ストラヴィンスキー:「春の祭典」「火の鳥」/小林研一郎&ロンドン・フィル

 コバケン&ロンドン・フィルのロシア音楽シリーズの最新盤。今や稀少なスタジオ録音と相まって、隅々まで丁寧に描かれた悠揚迫らぬ演奏が展開されている。「春の祭典」は、各パートの動きを明確に表出しながら、雄弁かつエネルギッシュに進行。鮮明な録音が音楽を強化し、中でも打楽器の迫力は凄まじい。「火の鳥」も緻密かつ精妙な造作が印象…

【CD】ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 他/バッティストーニ&東京フィル

 バッティストーニと東京フィルの「BEYOND THE STANDARD」。定番名曲と日本人作曲家の作品をカップリングし、セッション録音で綿密に仕上げていく本シリーズ第1弾の当盤は「新世界より」と伊福部昭。セッションならではの高音質なのが嬉しいが、演奏もまた優秀。基本的にストレートな解釈ながらも細部の工夫や仕上げが見事…