間宮芳生は調性音楽でも素晴らしいセンスとインスピレーションを見せる。それが民謡や旋法と出会った時に、清々しく、メランコリックな世界が開けてくる。歌い継がれてきた旋律をファンタジックな夢想と結びつけた「六つの日本民謡」のほかに、間宮がつながりの深かったフィンランドのそれを素材にした作品が収録され、長い創作歴のエッセンスを示してくれる。「チェロ・ソナタ」では蒸留されたようにピュアな空間でピアノが煌めき、チェロが息の長いカンティレーナを歌う。髙橋麻理子のチェロは張りのある音色で歌心にあふれるだけでなく、ソナタでは目の覚めるようなフラジオレットを聴かせている。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年9月号より)
【information】
CD『間宮芳生:チェロとピアノのための作品集/髙橋麻理子&山田剛史』
間宮芳生:五つのフィンランド民謡 チェロとピアノのための、チェロ・ソナタ、六つの日本民謡 チェロとピアノのための
髙橋麻理子(チェロ)
山田剛史(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-130 ¥3080(税込)