卓越した歴史的鍵盤楽器奏者として快演を紡ぐ一方、バロックの楽器になじみの薄い聴衆向けのワークショップなど、啓蒙にも力を注ぐ大塚直哉。今回は仏コルマールにあるルッカースのオリジナル楽器(1624年製作)を用い、オーケストラ作品を“翻案”した「イタリア協奏曲」と「フランス風序曲」を軸に、リュートの語法を鍵盤へ移し替えた2曲にも対峙した。決して技巧の誇示に陥らない、真摯で丁寧なプレイに、自身が最初に提示した「チェンバロらしさとは?」との問いへの答えを実感。さらに、大塚自らがバッハの音楽を愉しみ、それを聴き手と共有したいとの思いも伝わってくる。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2021年9月号より)
【information】
CD『J.S.バッハ:イタリア協奏曲・フランス風序曲/大塚直哉』
J.S.バッハ:イタリア協奏曲、フランス風序曲、前奏曲 フーガとアレグロ 変ホ長調、組曲 ホ短調
大塚直哉(チェンバロ)
コジマ録音
ALCD-1206 ¥3080(税込)