水谷川優子(チェロ)

フランスとベルギーの煌めきの違いを描く

Photo:Josep Molina
Photo:Josep Molina

 スケールの大きな音楽創りとしなやかな感性、人間性が滲む美音を武器に、国内外で精力的な活動を続けるチェロの水谷川優子。桐朋学園大学を経て、ザルツブルクやローマで学び、東京国際室内楽コンクールをはじめ、数々の受賞に輝いた。ソロから室内楽まで幅広いステージ活動をする一方、少年院などへ訪問演奏に赴くなど、社会貢献にも力を注ぐ。
 今年リリースした、時代や国に捉われない自在な選曲から楽器の魅力を追求した新アルバム『Con Anima〜魂をそえて』も好評だ。バッハの無伴奏組曲第1番を冒頭に置き、ピアノの小柳美奈子をパートナーに、ガーシュイン、黛敏郎、グラズノフ、ムソルグスキー、ブルッフと多彩な楽曲を弾き分け、チェロの表現の奥深さを印象付ける。
 そんな水谷川が『フレンチ・コネクション』と題したリサイタルを開く。ピアノの山本貴志と共にフランスとベルギーの作品を取り上げ、一見似ているようで実は大きく異なる、2つの国の陰影の違いを鮮やかに描き出す。まずはチェロの魅力と名技が盛り込まれたドビュッシー、独特のエスプリを内包するプーランクと、2つの名ソナタを。そして、大バッハの組曲に霊感を得たイザイの無伴奏ソナタ、ヴァイオリン作品から編曲されたフランクのソナタを弾く。「フランス語圏の文化には、誰もが心惹かれる。けれど、2つの国の魅力は、明らかに異質な煌めきを放っている」と水谷川。「両国の音楽は、その色彩と陰影、韻律で私を虜にする」と語る。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2014年5月号から)

チェロ・リサイタル・シリーズ Vol.Ⅶ 「フレンチ・コネクション」
★5月23日(金)・紀尾井ホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp

【CD】
『Con Anima〜魂をそえて』
HERB Classics
HERB-019 ¥3000+税