鬼才のピアニズム復活!
1978年にチャイコフスキー国際コンクールで優勝して以降、天才肌のピアニストとして国際的に活躍してきたミハイル・プレトニョフ。その活動が早くから作曲や指揮にまで広がっていたこともよく知られている。ロシア・ナショナル管を自ら創立し、瞬く間に世界的なレヴェルに鍛え上げた手腕も恐るべきものがある。
だが、だからこそ、プレトニョフが2006年にピアニストの活動を止めて指揮に注力すると発表したときには、残念な思いを抱いたファンも少なくなかっただろう。指揮者としても、彼は底知れぬ深みを感じさせる独特な解釈で楽曲を掘り下げてくれる。それはそれで素晴らしい。しかしピアノではそれが自らの指先で紡ぎだされ、ダイレクトに立ち上がってくる。解釈を味わうという点では、これに勝るものはない。
そのプレトニョフが久々に鍵盤の前に帰ってくる。きっかけを作ったのはカワイのピアノとの出会いだったというから驚きだ。厳しい理想ゆえに一度はあきらめたピアノの道を、プレトニョフはカワイの楽器の中に発見したというのである。
新たな章の始まりを告げる今回のツアーの東京オペラシティ公演では、協奏曲とリサイタルの2夜が予定され、ファンの渇望を癒してくれる。協奏曲の夕べ(現田茂夫指揮東京フィル)ではモーツァルト(第8番)、シューマンを弾く。リサイタルにはバッハ(イギリス組曲、番号未定)、シューベルト(ソナタ第4番・第13番)、そしてプレトニョフの芸術と相性のよさそうなスクリャービン(24の前奏曲)が選ばれている。知的でありながら、聴き手の胸にずしりとした重みを残すあのピアニズムに再会できる日がやってくる!
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年5月号から)
協奏曲の夕べ ★5月27日(火) リサイタル ★5月29日(木)
会場:東京オペラシティコンサートホール Lコード:38690
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp
他公演
5/23(金)・浜離宮朝日ホール Lコード:31362
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
5/28(水)・兵庫県立芸術文化センター Lコード:54263
問:芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255