ロシア・ツアーでの体験は一冊の本になるほどです!
杜の都・仙台で活動する仙台フィルハーモニー管弦楽団。常任指揮者パスカル・ヴェロの情熱的な指揮、意欲的なプログラミングで注目されて来た。2014年の定期演奏会ラインナップも多彩な内容で、クラシックの名曲の数々を楽しめるように構成されている。06年4月から常任指揮者を務めているヴェロに、今シーズンの聴きどころを聞いた。
「仙台フィルは2013年3月にロシア公演で大きな成功を収めました。その時に訪ねたモスクワとサンクトペテルブルクで、私はショスタコーヴィチの第5番とプロコフィエフの第5番を定期演奏会のプログラムに加え、その作品と向き合うことを決めたのです。どちらも革命と戦争の時代に深く関わりのある作品で、偉大な作曲家が直面した革命と戦争という大きな困難、そのインパクトを描きたいと思ったのです」
6月の第283回定期演奏会でショスタコーヴィチの交響曲第5番、10月の第286回定期演奏会でプロコフィエフの交響曲第5番がヴェロのタクトで演奏される。
「ロシア・ツアーでの体験は1冊の本が書けるほどです! 気候の違い、時差、過密な日程の中で、自分たちのベストの演奏をすることで、自分たちの力が及ぶ範囲と相互の理解について確認し、それを補強することが出来ました。東日本大震災の被災地からのいわば『伝道者』としてメッセージを抱えて訪問し、演奏を通じて大きなエネルギー、確かな未来、そして団結の必要性を、感謝と共に伝える事が出来たことも特筆すべきでしょう」
6月に演奏されるショスタコーヴィチの交響曲は、そこに込められた作曲家の想いについて、いまでも様々な議論がなされている。
「ショスタコーヴィチが作品の中で何を示そうとしたか、それはまさにミステリーです。ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、特に人間らしい魂に深く根ざしています。この作品は当時の政治体制の、労働者たちの、そして共産主義と大衆のための芸術の栄光を意識しながら、一方では正反対のもの〜自由の探求、集団心理の恐ろしさへの批判、抵抗の精神などの見解も提示していると考える事もできます。こうした解釈の可能性を、ショスタコーヴィチに直接会った事のある指揮者クルト・ザンデルリンクから、私は教えられました」
2014年シーズン幕開けを告げる5月の定期演奏会にはミュージック・パートナーの山田和樹が登場し、マーラーの交響曲第4番などを振る。充実のシーズンを迎える仙台フィルに期待したい。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2014年4月号から)
仙台フィルハーモニー管弦楽団
パスカル・ヴェロ(指揮)
第283回定期演奏会★6月13日(金)、14日(土) Lコード:25781
第286回定期演奏会★10月24日(金)、25日(土) Lコード:25784
山田和樹(指揮)
第282回定期演奏会★5月16日(金)、17日(土) Lコード:25780
会場:日立システムズホール仙台(仙台市青年文化センター)
問:仙台フィルサービス022-225-3934
https://www.sendaiphil.jp