【CD】シューマン:ピアノ・ソナタ第2番、第1番/鐵百合奈

 東京藝術大学博士後期課程を修了したピアニストの鐵百合奈。第86回日本音楽コンクール第2位、柴田南雄音楽評論賞(本賞)も2年連続で受賞した、演奏・研究ともに第一級の才媛だ。緻密なベートーヴェン研究というベースがあるからこそのシューマンのピアノ・ソナタの演奏は、作品にちりばめられた物語性と唐突な楽想変化のすべてに根拠をもたせていて理知的。旋律、和声、そして細かな各動機の関連が“見える”ように鮮やかで、様々な要素が錯綜するこの音楽の謎を読み解くような感覚になる。一方で流麗な音楽運びも鐵の大きな魅力であり、決して肩ひじ張った演奏ではない。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2021年8月号より)

【information】
CD『シューマン:ピアノ・ソナタ第2番、第1番/鐵百合奈』

シューマン:ピアノ・ソナタ第2番、同第1番

鐵百合奈(ピアノ)

N&F
NF29502 ¥オープンプライス