ケント・ナガノ指揮モントリオール交響楽団

相性抜群のコンビが待望の再来日!

ⒸMarco Campanozzi

ⒸMarco Campanozzi

 カナダの名門モントリオール交響楽団といえば、わが国ではかつて、シャルル・デュトワの名と結びついて人気のあったオーケストラである。ディスクを中心に音楽を楽しんでいる愛好家たちにとっては、もしかしたら今でも同じイメージかもしれない。だが、2006年から新しくこのオーケストラの音楽監督となっているケント・ナガノの指揮でも、すでにベートーヴェン、ブルックナー、マーラーなどのいくつかの交響曲のディスクがリリースされている。そして、2008年4月には、その新しいコンビで、すでに初来日しているのである。
 実際にコンサートホールでお聴きになった方も多いだろうが、ケント・ナガノとモントリオール響のあの初来日時の演奏――特にフランスの作品群は素晴らしかった。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」や交響詩「海」、ベルリオーズの「幻想交響曲」、ラヴェルの「ボレロ」などを取り上げていたのだが、その音色の壮麗さ、響きのふくよかさは、この上なく見事なものであった。ピアニッシモでのふくらみのある美しさも筆舌に尽くしがたく、「海」での、弦と木管が囁き交わす個所など、まるでふんわりと泡だったクリームが柔らかくあふれ出すような雰囲気を感じさせていた。それは、ケントが早くもこのモントリオール響を完全に把握していたことをうかがわせるものであった。つまりケントは、前任の音楽監督デュトワの時代に創られたブリリアントな響きを残しつつ、更にその上に彼独自の、しっとりとした柔らかい音色を植えつけていたのである。それに加え、ハーモニーのバランスの巧みさも特筆すべきもので、ケントの腕の冴えというべきであろう。オーケストラの演奏レベルが非常に高いものだったことは、言うまでもない。
 さて、あれからすでに6年、このコンビは、ますます快調な進撃を続けている。両者の呼吸も、今はさらに完璧な状態にあるだろう。今年3月に行われた大規模な欧州ツアーも成功裡に結ばれたということだ。そのツアーに携えて行った曲の中には「幻想交響曲」や「ボレロ」なども含まれていて、彼らのレパートリーには常にフランスものが大きな位置を占めていることがうかがわれる。
 幸いなことに、今秋の来日公演の曲目でも、そのフランスの作品が中心を占める。6年ぶりの来日を、再び得意のレパートリーで飾ろうというわけだろう。「海」「ボレロ」のほかに、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」と、彼が色彩的に編曲したムソルグスキーの「展覧会の絵」も含まれるという豪華さだ。これらは、来日直前の9月定期のプログラムにも入っているので、私たちはその「準備万端整った」演奏が聴けるに違いない。
 なお今回は、ストラヴィンスキーの「ヴァイオリン協奏曲」(ソリストは五嶋龍)が入っているのが面白い。通常の名曲でないところがミソだ。これも豊麗な演奏が聴けるのではないかと思う。
文:東条碩夫
(ぶらあぼ2014年5月号TipTop)

Information
10月10日(金)・東京芸術劇場(ソリスト:五嶋龍) 
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
10月13日(月・祝)・よこすか芸術劇場 
問:横須賀芸術劇場046-823-9999
10月16日(木)・サントリーホール(ソリスト:五嶋龍) 
問:カジモト・イープラス0570-06-9960