国際的なキャリアを積むピアニスト、多紗於里のアルバム第3弾。ラヴェル作品集とシューマン作品集に続いて取り組んだのは、シューベルトの最後の2つのソナタ。いずれもスケールの大きな第20番・第21番である。第20番では、楽章内の感情の起伏の激しさ、楽章間のキャラクターの大きな違いを、多紗於里は音楽的に俯瞰・把握しながら、思い切ったアタックと柔らかなタッチのコントラストで聴かせる。第21番は安定したテンポ設計の中に繊細な緩急を効かせ、晩年のシューベルトの世界を丁寧に構築する。ベーゼンドルファーModel275の豊潤な響きがたっぷりと伝わる録音も秀逸だ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2021年7月号より)
【information】
CD『シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番&第21番 /多紗於里』
シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番・第21番
多紗於里(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7945-6(2枚組) ¥3300(税込)