シェーンベルクがブラームスに見出した新しさを浮き彫りに
東京都交響楽団の第926回定期演奏会Aシリーズに登場するのは、終身名誉指揮者の小泉和裕。プログラムの主役となるのはシェーンベルクだ。シェーンベルク作曲の「浄められた夜」と、シェーンベルクが管弦楽用に編曲したブラームスのピアノ四重奏曲第1番が並ぶ。
革新的な作曲家とみなされるシェーンベルクと、保守的な作曲家と思われがちなブラームスであるが、シェーンベルクが「進歩主義者ブラームス」と題した講演および論文を発表したことはよく知られている。ブラームスが過去の伝統から多くを学んだように、シェーンベルクもまた過去の巨匠たちから多くを受け継ぎ、ブラームスの独創性への賛辞を惜しまない。この日のプログラムは、新しい音楽は伝統から生まれるものとするシェーンベルクの姿を雄弁に伝える。
「浄められた夜」はデーメルの詩に基づいて書かれた作品で、後期ロマン派音楽を継承した濃密な作品。後に十二音技法を創始するシェーンベルクだが、この作品はいまだスーパーロマンティックだ。弦楽合奏から官能的な響きが生み出され、激烈な感情の奔流が押し寄せてくる。一方、ピアノ四重奏曲第1番は本来、ブラームス流の重厚な室内楽作品だが、シェーンベルクは管弦楽化に際して多数の打楽器群を加え、原曲にはない鮮やかな色彩をもたらしている。とりわけ「ジプシー風ロンド」と題された終楽章は華麗だ。小泉指揮都響の長年にわたるコンビが、オーケストラを聴く醍醐味を存分に伝えてくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年5月号より)
*4月23日に発出される緊急事態宣言及び都における緊急事態措置等により、コンサートを含むイベントに対して中止等の要請がされる見通しのため、本公演は中止となりました(4/23主催者発表)。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
第926回 定期演奏会Aシリーズ
2021.5/10(月)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp