ピッツバーグ響の首席フルート奏者を務めるローナ・マギー初の国内アルバム。豊麗な美音と卓越した技巧による滑らかなフレージングが実に素晴らしい。アルバムタイトルに「Songs without words」とある通り、歌謡性の高い、あるいは歌曲を編曲した作品が含まれるが、圧巻はプーランクのソナタ(殊に第2楽章)と冒頭のシューベルトであろう。ここでの豊かな情感の発露には演奏者がライナーで述べる「演奏する曲はすべて“歌詞のない歌”なのです」との言葉の最良の実践がある。末尾に1曲目のシューベルトで作曲者が引用した「挨拶を送ろう」が置かれ、見事な円環を成す。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2021年5月号より)
【information】
CD『ソングズ・ウィズアウト・ワーズ/ローナ・マギー』
シューベルト:ファンタジー ハ長調、「12の歌」より〈挨拶を送ろう〉/上林裕子:クリスタルの時/ヴィラ=ロボス:この道/プーランク:フルートとピアノのためのソナタ/ヴィターリ:シャコンヌ/タファネル:アレグレット グラジオーソ 他
ローナ・マギー(フルート)
石橋尚子(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7940 ¥2750(税込)