本盤は、異国の風景や伝承が色とりどりのハーモニーで描かれるイベール「物語」をピアニスト・文筆家の青柳いづみこが軽やかに奏でて幕を開ける。言葉やイメージと音楽が素晴らしく結びついたとき、音の色彩の密度がさらに濃く、そして輝きを放って聴こえてくるということが改めてよくわかる。特にミヨーの「ボヴァリー夫人のアルバム」が素晴らしい。青柳の言葉を繊細に扱う朗読に、高橋悠治の静かで硬質ながら、そっとあたたかさが伝わる演奏が結びつくことで、次々と色鮮やかな映像が浮かんでくる感覚を味わえた。“表現”の新たな可能性と感動に出会ったような気がする。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2021年4月号より)
【information】
CD『物語/青柳いづみこ&高橋悠治』
イベール:物語/シュミット:小さな眠りの精の一週間/ミヨー:ボヴァリー夫人のアルバム
青柳いづみこ(ピアノ/朗読)
高橋悠治(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-7261 ¥2800+税