北京出身、アメリカや日本で活動を続ける毛翔宇は、知性と抒情性の光るピアニスト。本作はシューマンの若き日の作品「ダヴィッド同盟舞曲集」と、約10年後の所産である「森の情景」を収めている。毛翔宇のどこまでも冷静でリリカルな音楽作りが、静と動、明と暗のコントラストを立体的なタッチで描き分け、シューマンの濃密なロマン的表現をすっきりと、かつ生き生きと伝える。「ダヴィッド同盟舞曲集」における瞬間的に激昂するような表現も勢いに任せず、深い呼吸感で彩る。後者の第7曲「予言の鳥」などは、ぞっとするほど美しく透明感のある響きで、伸びやかに歌う。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2021年2月号より)
【information】
CD『シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集、森の情景/毛翔宇』
シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集、森の情景
毛翔宇(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-9210 ¥2800+税