オペラ 《夕鶴》

“普遍的な人間ドラマ”としての再創造

 團伊玖磨のオペラ《夕鶴》といえば、1952年の初演以来、すでに800回以上も上演されているという不朽の名作だ。その定番中の定番のフル上演に、佐藤しのぶが初挑戦というのはいささか意外。「自分のすべてを賭けたい」との所信を表明しているとおり、満を持しての初役となる。もちろん、伊藤京子や中沢桂といった、かつての「つう」の系譜に、彼女の名が連なるのは何の違和感もない。持ち前の、柔軟な歌唱力と幅広い表現力で、どんな新しい「つう」を演じてくれるのか、いやがうえにも期待が膨らむ。
 製作陣がすごい。演出は、すでにオペラ演出も手がけている歌舞伎役者の市川右近、美術には現代日本を代表する日本画家・千住博。衣装には巨匠・森英恵。こうした豪華スタッフが結集して、従来の民話劇のスタイルにとらわれることなく、世界に通用する「和モダン」の舞台を創り上げるという。たしかに、日本ではあまりにも有名な民話を素材とする物語(鶴の恩返し)だけに、小中学生でもわかりやすいというメリットと裏腹に、ともすると日本人だけに固有の作品像を結んでしまうという危険もあるのかもしれない。今回は、作品の本質だけを取り出して、普遍的な人間のドラマとして再創造するということになるのだろう。
 もちろん演奏者も粒選り。倉石真(テノール/与ひょう)、高橋啓三(バス/惣ど)、原田圭(バリトン/運ず)、そして指揮の現田茂夫と万全の布陣。新たな息吹を得た《夕鶴》が、この1月から4月にかけて全国を巡る!
文:宮本 明
(ぶらあぼ2014年1月号から)

★1月18日(土)・東京文化会館 
 3月29日(土)・Bunkamuraオーチャードホール
問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040

他公演 
1/26(日)・栃木県総合文化センター
2/1(土)・よこすか芸術劇場 
2/8(土)・シンフォニア岩国 Lコード:68085
2/11(火・祝)・島根芸術文化センターグラントワ Lコード:68551
2/16(日)・熊谷文化創造館さくらめいと 
3/14(金)・アクトシティ浜松 Lコード:43712
4/8(火)・アクロス福岡 Lコード:81612
4/12(土)・大阪/フェスティバルホール Lコード:59406
総合問合:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp