人気アーティストの名演を聴いて社会貢献
新型コロナウイルスによる混乱の中で顕在化したことのひとつが、「献血協力者の減少」である。喫緊の問題としてたびたび報じられた時期もあり、改めて継続的な献血の重要性を知る機会になった。すでに60回以上の開催を重ねる「MIKIMOTO 日本赤十字社 献血チャリティ・コンサート」は、その収益を「献血で治療を受けられる環境がより整うことを願い“献血運搬車の購入・整備等の血液事業への充当”に目的を限定して日本赤十字社に寄付」するという公演であり、その意義はこれまで以上に増している。
第64回となる年始の公演は、いま最注目の指揮者である原田慶太楼と東京都交響楽団、ソリストにトップクラスの実力と人気を誇るギタリストの村治佳織を招き、華やかなオーケストラコンサートになる。村治が奏でるのはロドリーゴのアランフェス協奏曲。哀愁に満ちた第2楽章の名旋律が広く知られるギターの代表作で、彼女ならではの美しい名演を堪能したい。オーケストラは、ビゼー《カルメン》組曲抜粋、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」と、これも別格の人気曲を聴かせてくれる。
原田と都響は、意外にもこれが初共演とのこと。それだけでも興味を引くが、原田はこの夏、複数の演奏会で、美演、快演、剛演と、曲ごとにタイプの異なる方向性で、個性的かつ魅力あふれるパフォーマンスを見せてきた。よって、この日も都響からどんな演奏を引き出すかは、その瞬間までわからない。意義深さとライブの楽しみを備えた、注目されるべき公演となる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年12月号より)
2021.1/23(土)14:00 サントリーホール
2020.12/11(金)発売
問:ソニー音楽財団03-3515-5261
https://www.smf.or.jp