銀座ぶらっとコンサート #144 宮本益光の王子な午後26 〜ふるさとの歌 〜

郷愁を誘うメロディをじっくりと味わう


 王子ホールがその好立地をいかし、平日の昼下がりに買い物など“銀ぶら”途中に友達同士でふらっと立ち寄れるような気軽な公演をめざす「銀座ぶらっとコンサート」。コロナ禍でこの人気企画も今年は中止を余儀なくされる回もあったが、当初3月に予定されていた#144が、定員の50%販売で2部制をとる形でめでたく12月25日に振替開催が決定した。

 奇しくもクリスマス公演となったのは、演奏活動に留まらず作詞・訳詞・脚本執筆・演出など多才な活動で知られ、バリトン“王子”の異名をもつ歌手・宮本益光の人気シリーズ第26弾。9月に「なみだの歌」を集めた第27回が先に開催され好評を博したばかりで、ファンにとっては聖夜の素敵な贈り物になりそうな今回のテーマは「ふるさとの歌」。日本人にとっては異国情緒というよりも郷愁を誘う旋律であるアメリカやアイルランドの民謡に始まり、イタリア語・ドイツ語・フランス語による名歌曲が盛りだくさん。オペラ・アリアの中から極めつきの“望郷”ナンバー〈プロヴァンスの海と陸〉(ヴェルディ《椿姫》より)が聴けるのもスター・バリトンならでは。もちろん日本歌曲も披露される。ピアノ演奏を担当するのは東京藝大の同期ですでに多くの共作を生んでいる作曲家・加藤昌則。同シリーズの名物コンビによる楽しいトークも楽しみだが、もともとはTOKYO FM少年合唱団の委嘱による合唱組曲のひとつで、二人が共作した佳曲〈桜の背丈を追い越して〉を再び聴くことができるのも嬉しい。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2020年12月号より)

2020.12/25(金)13:30 16:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp