小山実稚恵の室内楽 〈第4回〉 ヴィオラ&ピアノ・デュオⅡ 川本嘉子とともに

名手二人の稀少なコラボで聴くドイツの逸品

左:川本嘉子 右:小山実稚恵
C)大窪道治
 このところ、名実ともに日本を代表するピアニスト、小山実稚恵の充実ぶりが目を引く。なかでも2019年からの新シリーズ「ベートーヴェン、そして・・・」や、今年リリースしたCD『ハンマークラヴィーア・ソナタ 他』でのニュアンス豊かな名演が際立っている。そんな彼女の室内楽の名奏を味わえるのが、18年から第一生命ホールで開催されている「小山実稚恵の室内楽」。信頼厚き名手たちとともに、ブラームスを軸にした多様な形態の室内楽曲を聴かせる興味深いシリーズだ。

 12月の第4回は「ヴィオラ&ピアノ・デュオⅡ 川本嘉子とともに」。これは18年12月に続く共演で、前回同様にドイツの名作が披露される。川本は、ソロや室内楽で最も活躍しているヴィオラ奏者の一人。多方面で実績を重ね、17年からN響の首席客演奏者も務めている。プログラムは、ブラームスのヴィオラ・ソナタ第2番を主軸に、J.S.バッハ、メンデルスゾーン、ベートーヴェンのチェロ・レパートリーを加えた密度の濃い内容。ヴィオラの看板曲たるブラームスの枯淡の傑作はむろん要注目だし、他もヴィオラに合った作品ゆえに清新な感触が期待できる。特にメンデルスゾーンのチェロ・ソナタ第2番の魅惑のメロディを同楽器で聴くのは妙味十分。そしてこうした楽曲におけるピアノの重要性=注目度の高さも言を俟たない。

 ヴィオラ+ピアノのデュオをこのクラスの二人で耳にする機会も、小山のヴィオラとのコラボに触れる機会もかなり稀。豊潤で雄弁な川本と自在性抜群の小山が奏でるドイツ室内楽のエッセンスを、大いに満喫したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年11月号より)

2020.12/12(土)14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 
https://www.triton-arts.net