「驚愕の第九」そして「革新の第九」

生誕250年に贈る刺激的な2つの試み


 生誕250年を迎えたベートーヴェンの作品の中でも、特に高い人気を誇る「第九」こと交響曲第9番「合唱付」。そんな傑作を“なかなか聴けない”かたちで楽しむ2つの公演が、横浜みなとみらいホールで開かれる。

 まずは、フランツ・リストによるピアノ編曲版を、日本を代表する名手・若林顕の妙技で味わう「驚愕の第九」(10/5)。ベートーヴェンの交響曲全9曲を編曲したリストだが、「第九」はピアノ・デュオ版の後にソロ版に着手するなど、特に慎重に取り組んだ。
 膨大な声部を擁する作品を、10本の指だけで表現するには、超絶技巧が要求される。しかし、そこは2008年に録音も発表するなど、かねてから同曲に対峙している若林。単に難曲を弾きこなすに留まらず、“ピアノ曲としての第九”の魅力を余さず引き出す。

 そして、気鋭の指揮者・渡辺祐介率いるピリオド楽器オーケストラ「オルケストル・アヴァン=ギャルド」による「革新の第九」(11/10)。今や本流の一つとなった古楽ムーヴメントだが、ピリオド楽器でこのシンフォニーを聴く機会はまだ少ないだけに、貴重な体験となるはずだ。

 今回は、藤谷佳奈枝(ソプラノ)、山下牧子(アルト)、中嶋克彦(テノール)、黒田祐貴(バリトン)という実力派ソリスト、クール・ド・オルケストル・アヴァン=ギャルド(合唱)とともに、「初演もかくや」という鮮烈な響きで傑作を上演する。さらに、併演の「ピアノ協奏曲第4番」では、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第2位となった人気の川口成彦がソリストとして登場するのも楽しみだ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2020年10月号より)

「驚愕の第九」 2020.10/5(月)14:00 
「革新の第九」 2020.11/10(火)19:00
横浜みなとみらいホール
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 
https://mmh.yafjp.org/mmh/