期待の新鋭の本格派プログラムを堪能する濃密な30分
10月20日、トッパンホールの「ランチタイムコンサート Vol.107」に出演するのはヴァイオリニスト、荒井里桜。2018年の第87回日本音楽コンクール第1位、17年の第15回東京音楽コンクール第1位および聴衆賞などのコンクール歴を誇る注目の新星である。現在、東京藝術大学4年に在学中ながら、すでに国内主要オーケストラとの共演も多い。ジェラール・プーレ、永峰高志、澤和樹、山崎貴子、堀正文、玉井菜採らに師事する。
今回の公演では、ピアノの日下知奈との共演で、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番、およびパガニーニの「ロッシーニの《タンクレディ》のアリア〈こんなに胸騒ぎが〉による変奏曲」の2曲が演奏される。ランチタイムコンサートといっても、がっつりと本格派のレパートリーを聴かせてくれるのがトッパンホールの本シリーズならでは。
プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番は、もともとはフルート・ソナタとして書かれた作品。原曲の演奏機会が十分に得られなかったところに、オイストラフがヴァイオリン用の編曲を強く進言して、二人の共同作業からヴァイオリン・ソナタ第2番として生まれ変わった。プロコフィエフの作品のなかでも、とりわけ清新なリリシズムを湛えた名曲といっていいだろう。一方のパガニーニ作品はオペラ由来の歌心と、この作曲家ならではの名技性が聴きどころ。新鋭の魅力をさまざまな角度から伝えてくれるプログラムが用意された。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2020年10月号より)
2020.10/20(火)12:15 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com