【CD】松平頼曉 声楽作品集

 言葉は文字としての相、音としての相、意味としての相と、器楽にはないいくつかの特性を持っている。ここに収録された6作品のテキストのそれぞれに、松平頼曉は異なる相から入りこみ、言葉と音楽の関係性に着目しながら敷衍していく。それは詩句の朗読に薄く音を付けた風情の「歌う木の下で」、隠れキリシタンの旋律を編みなおした「反射係数」といったシンプルな作品化から、歌詞の内容と音楽とのずれ(「サブスティテューション」)、擬音語と楽音との鏡像関係(「時の声」)など高度に実験的なレベルに至る。ソプラノの太田真紀が強力な共演陣とともに、変幻自在の表現力でこの世界に挑んだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年10月号より)

【information】
CD『松平頼曉 声楽作品集』

松平頼曉:アーロンのための悲歌、歌う木の下で、ローテーションⅡ、時の声、サブスティテューション、反射係数

太田真紀(ソプラノ)
溝入敬三(コントラバス)
白井奈緒美(サクソフォーン)
山田岳(エレクトリック・ギター)
中村和枝(ピアノ)
甲斐史子(ヴィオラ)

コジマ録音
ALCD-125 ¥2800+税