東京藝大、ウィーン国立音大を経て長年ドイツに在住し、角野裕とのピアノ二重奏等で活躍している角野怜子の初のソロ・アルバム。有名作中心の9曲が収録されたショパンのノクターン選集で、美しいタッチと的確な構築が光る好演が終始展開されている。作品9の3曲や遺作の第20番等の甘美な楽曲における品性を湛えた味わい深さや、第7番嬰ハ短調の緊迫したドラマはとりわけ魅力的。元ドイツグラモフォンのディレクター、オリバー・ロガッラ・フォン・ハイデンによるナチュラルな録音も相まって、“大人の高級サロン”的な雰囲気をも感じさせる一枚に仕上がっている。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年9月号より)
【information】
CD『夕べの詠 ショパン:ノクターン愛奏曲選集 /角野怜子』
ショパン:夜想曲第1番〜第3番・第19番・第9番・第7番・第8番・第20番・第15番
角野怜子(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7927 ¥2500+税